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直島・地中美術館

 7月にオープンした香川県・直島の地中美術館は、安藤忠雄設計の建物のユニークさにおいても、また近現代の3人のアーティストの作品の質の高さにおいても、開館以来批評家から絶賛されています。

 私も先日、大阪から来た友人たちを伴って直島を再訪しました(本誌1412号参照)。同じ財団が運営する現代美術館・ベネッセハウスがすばらしかったからです。

 しかし、地中美術館ではすべてが異なっていました。まず、来館者は美術館とは独立したチケットセンターにおいて、おびただしい数のボランティアスタッフから作品鑑賞に当たってのさまざまな「指導」を受けます。

 最後に、「作品に触れない、敷地内で写真など撮らない、係員の指示に従います」という内容の誓約書にサインさせられて、ようやく美術館本体に向かうことになります。

 「何か違うなあ」という違和感を感じつつ、目玉のクロード・モネの部屋に入ろうとしたら、こんどは靴を脱いで備え付けのスリッパを履けという。スタッフの説明では床の感触を感じてもらうためと言っていましたが、大理石の床(モザイク)が靴で摩耗するのを怖がってのことでしょう。素足の私はミズムシをもらいはしないかと気色悪くなり、途中でスリッパを脱ぎ捨ててしまいました。

 例えばベネツィアのサンマルコ寺院のモザイクが千年の歴史を経て、すっかりすり減り波打ちながらもいよいよ輝きを増しているのを見るにつけ、直島のスリッパ強要はいかにも興ざめです。

 そして、ただ働きのボランティアの若者たち。高名な建築家が設計した最先端の美術館で働くことは意義あることと本人たちは満足しているかもしれませんが、若者の仕事とは思えず残酷な感じを受けました。もちろん観客にとっても彼らのこうるさい指導はかんじんの作品鑑賞をおおいに妨げます。

 中年3人組みの我々は「妙に疲れた」とぼやきつつ直島を後にしたのでした。

本誌:2004年9.1号 14ページ

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