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気持ちいい!

 アテネ・オリンピックがこんなにもすばらしい大会になるなんて正直いって始まるまでは想像もできませんでした。ところが開会式の模様をテレビで見て、その美しさ、芸術性の高さには感動のあまり鳥肌がたってしまいました。

 1984年のロサンゼルス大会以来開会式がセレモニーからショーへと様変わりし、派手な演出が競われてきましたが、終わってみれば記憶からさっと消えてしまいました。

 ところが、今回のアテネ・オリンピックの開会式にはそういうショーを超越した、何かしらこちらの魂を直接ゆさぶるものがあり、極上のオペラを見ているような気分になりました。

 魂にとどく本物の感動の理由はというと、ギリシャには今でも古代の神々のひとり「エロス」が「生ける神」として民族の心に存在し続けているからではないか、と想像されます。

 そしてこのエロスはこの地を闘いの場所として集結した各国の選手たちのこころも捕らえずにはおられないようです。それはゴールドメダリストたちの表情によく表れていました。

 柔道の谷亮子は過去に銀二つ、シドニーでは金を取っているにもかかわらず、今まであまり幸せそうな顔をしたことがない。ところが今回は、「シドニーの百倍うれしい!」と神々しいまでに美しい笑顔でファンを魅了しました。

 平泳ぎ100メートルの北島康介は「タッチしたあと、何を叫んでいたか」と聞かれて、「覚えていないですね」と答えていました。それもそのはず、アテネの紺碧の空のもと、ひたすらゴールを目指す北島は、ギリシャ語でいうところのekstasis=エクスタシー、つまり魂が体から抜け出してしまう境地で泳いでいたはずですから。

 それはまぎれもなく、「気持ちいい! 超気持ちいい!」体験であったと思います。

本誌:2004年8.21号 14ページ

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