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接ぎ木名人

 畑に種から生えて背丈ほどに育った柿の木が3本あります。このままでは渋柿になるので、4月初め熟柿としては最高の品質を誇る西条柿を接ぎ木しました。

 接ぎ木というのはアマチュア園芸家にとってはかなり難しい技に属します。人間でいえば臓器移植のようなものでしょう。自称“接ぎ木名人”である私はここ20年来、近所の人から頼まれるまま何本もの渋柿の木を甘柿に変えてきました。

 岡山では4月上旬、桃の花が咲くころが接ぎ木の適期。切り出しナイフをあらかじめよく研いで準備しておきます。接ぎ穂は真冬に親木から採取し春まで冷蔵庫で保管しておいたものを使います。

 そしていよいよ作業開始。素早くナイフで接ぎ穂と台木を加工し、両方の形成層が重なるようビニールテープでしっかり巻いて固定します。緊張の一瞬です。すべてが順調にいって接いだ枝から新芽が伸び出すまでには一カ月もかかるのでその間気がかりです。

 思い返してみると、私は幼少のころから野菜や果樹に並々ならぬ興味をもち、接ぎ木なども見よう見まねで挑戦してみたもののうまくいったためしがない。とうとう大学生のころ村の接ぎ木名人に教えを乞うたのです。そのおじさんも20年ぐらい前に他界され、以来私が二代目を勝手に名乗っている次第です。

 考えてみると、柿の木を接ぐ技術を私もまた村の古老から引き継いだことになります。先代が接いだ柿の木、そして私が接いだ木が人間の寿命をはるかに超えてこれから何十年、何百年と生き続け、秋が巡ってくるたびに甘い実をつけ続ける様を想像するとちょっとうれしくなります。(康)

本誌:2004年5.1号 16ページ

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