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連載記事杉山慎策の経営学考察

国富論を読む4

 前号でバベッジの理論の一つの柱である「同じ工程を何度も繰り返すことによって獲得される技術の向上」つまり人の持っている優れた能力である「学習効果」について述べた。今回はその「学習効果」について詳述してみたい。元々この考え方はスミスの分業理論の中核の考え方であり、「分業により個々の技能が向上すること」に由来している。現代の経営学では「学習効果」と呼ばれるものである。

 この「学習効果」について東京理科大学の高橋伸夫氏は「学習曲線の基礎」(2001)という論文で、飛行機の生産機数に伴うコストの削減について述べ、製造機数が2倍になると労働コストは一定の比率、例えば10%あるいは20%低下することを述べている。飛行機の生産数が2倍になれば、生産コストは20%減の80%になった。このためこの学習曲線は一般に80%曲線と呼ばれる。経済学が専門の高橋氏はこの80%曲線が経営学で安易に使用されていることに苦言を呈しているが、この理論を精緻化し今日の経営学で活用される戦略理論を作り上げたのはボストン・コンサルティング・グループである。

 BCGはブルース・ヘンダーソンにより創設された。彼はハーバードビジネススクール(HBS)卒業を目前に自主退学する。その後ジェネラル・エレクトリック(GE)や戦略コンサルタントのアーサー・D・リトルを経て、1963年にBCGを設立した。彼は「企業がどうすれば持続可能な成長を遂げることができるか」についての方程式を創り出すために「学習曲線」に基づく「成長・シェアマトリックス」というヒット商品を生み出した。

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本誌:2024年3月4日号 15ページ

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