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従業員の賃金の引き下げ(減給)

Q 従業員の賃金を引き下げることはできますか。

 従業員の賃金を引き下げることができるのは、次の場合です。①従業員の合意が得られた場合、②就業規則の変更による場合、③労働協約による場合、④就業規則の賃金減額条項又は査定条項による場合、⑤業務命令としての降格による場合、⑥懲戒処分による場合です。

 ①は、労働者の自由な意思に基づくものであることが明確であることが必要です。

 ②は、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らした合理的なものであるときは、就業規則により労働契約の内容を変更することができます(労働契約法10条)。なお、賃金のような労働者にとって重要な権利、労働条件に関し不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更は、高度の必要性に基づいた合理的な内容でなければならないとされています。

 ③は、一部の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的とするなど、労働組合の目的を逸脱して締結された場合には労働協約の効力は否定されます。

 ④は、会社の業績悪化や労働者の勤務成績等により翌年度の賃金を決定する旨の規定があり、その規定に基づいて賃金を引き下げる場合です。公平性を欠くような差別的な査定がなされた場合、争いになりやすいので注意が必要です。

 ⑤は、人事権の行使としての業務命令に基づくものであっても、あらかじめ就業規則にその旨の規定を置いておいた方が無難です。これに関連して降格を伴う配転命令は、賃金の引下げを伴いますので、配転命令権の濫用とならないように注意が必要です。

 ⑥は、就業規則に懲戒の種別及び事由を明定する必要があります。

 ②、④、⑤、⑥については、就業規則の作成義務が法令上ない場合であっても、働く上でのルールである就業規則を作成しておくか、労働契約書に明記しておくことが、トラブルを未然に防ぐ上で望ましいといえます。

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本誌:2024年1月29日号 21ページ

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