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巻頭特集岡山県下10金融機関 2021年3月期決算特集

貸し倒れリスク回避へ伴走型支援拡大 コロナ禍で資金需要急増 総合サービス化が加速

 岡山県内に本店・本部機能を置く10金融機関の2021年3月期決算が出そろった。コロナ禍の移動自粛に伴う出張費などの経費減で利ザヤが改善し、一転増益基調となった。また厳しい環境に置かれた企業の資金需要が急拡大し、融資が近年にない高い伸びを示した。しかしこれが意味するのは貸し倒れリスクの増大にほかならず、倒産させないためのコンサルティングなどの伴走型支援の動きが活発化。長期にわたる低金利を背景に徐々に進んでいた金融機関の総合サービス化が一気に加速する事態となった。

決算概要

融資

資金繰り支援で大幅増加

 融資は各金融機関で大きく伸びた。コロナ禍での企業への資金繰り支援のためだ。企業側に明確な使途はないが、先行き不透明感から手元資金を厚くしたいというニーズが根強く、ほぼ全業種向けに増加した。

 個人向けでは住宅ローンが増加。一方でカードローン、フリーローンは残高が減少した。借りていた客がコロナ対策での国からの給付金を返済に充てたからだ。外出規制などで消費の機会が減ったことも影響し新規実行も鈍かった。大口融資では不採算の市場性ローン、自治体向けを圧縮する動きも目立った。一方で、中国銀行では今まで大都市部の大手企業向けの融資を圧縮してきたが、コロナ禍で資金需要が高まり伸ばした。

 余裕資金の運用では日本銀行のコロナオペで預け金が大幅に増加した。日銀の金融機関への資金提供で間接的に企業を支援する政策で、各機関は日銀からの無利息の借入金を日銀の当座預金に預けて運用した。

②預金・預かり資産

コロナ禍で手元資金厚く

 預金も末残、平残とも最近にない高い伸びを示した。特に普通預金が大幅に増加した。企業がコロナ対策で資金を借りたが具体的な使途はなく同預金に回したため。個人預金も増加した。引き続き年金口座、給与振込口座の獲得に注力してきたが、さらに個人客が国からの給付金を消費に回さず将来に備え預け入れたため。半面、定期預金は低金利で魅力がなく低調だった。信用金庫、信用組合の定期積金は縮小。人海戦術で非効率だったことに加え、感染防止で集金を伴う新規の受け入れを中止し、口座振替や店頭での扱いのみにした。

 預かり資産営業は前半コロナ禍で対面販売ができず低調だったが、後半リモート面談で対応した。その中でも保険販売は相続対策などで根強い需要があり、堅調に推移した。

③利益

運用量増え資金利益増益

 コロナ禍による移動の制限で出張費、交際費、研修費など営業経費が大幅に減少し増益基調となった。低金利政策の継続で貸出金、有価証券、預け金など資金運用の利回りが縮小したが、それ以上に経費の下げが大きく、預貸金利ザヤ、総資金利ザヤが縮小した。

 資金利益(計算式に経費は含まず)はばらつきが出た。資金運用の利回りは縮小したが、預金の急激な伸びに伴う運用量の増加でカバーし増益となった。減益となったところは、前期より投資信託の解約益が減少したため。

 経費の減少でコア業務純益、業務純益は増益基調。経常利益も増益。前期末にコロナ禍で株式相場が下落。株式、投資信託などの減損処理、損切りによる売却損の計上を余儀なくされたが、今回はそれがなくなったことがプラス要因となった。

 一方、与信コストは増加傾向。資金繰り支援で倒産件数は少なかったが、厳しい経済状況から保守的に見積り貸倒引当金を積んだ。同引当金の計上方法は過去の貸倒実績率をもとに算出するのが原則だが、新たな動きとして玉島信金はコロナ禍での将来の業況予想をもとに引当金を見積もるフォワードルッキングな算出方法を採用した。

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