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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

予期せぬ出来事

 先日、遅めの昼食をとろうと近所のこじゃれた和食の店に行きました。ランチタイムだけ営業しているその店は、聞くところによると店のオーナー(ママさん)は適応障害がある息子さんの社会リハビリのために作ったそうです。採算よりも息子が活躍できる空間を確保するために開いた店だけあって、インテリアにも料理にも優しい気遣いが随所に感じられます。とりわけ定食についてくる山菜御飯が絶品でいつもお代わりをお願いしています。

 さて、時計は1時を回っていたのでお客はカウンター席にOLが2人いるだけ。私はソーシャル・ディスタンスを取って奥の4人掛けテーブル席に座りました。離れて座っていても静かな店内に食事を終えた彼女たちのテンポのいい、楽しそうなおしゃべりが響き渡ります。仕事のこと、子育てのこと、おしゃれのこと。でも今はコロナ禍のご時世、他のお客(私)もいることだしもう少し声を低くしてもらえたらなあ……。

 そんなことを思いながらも私の山菜御飯の茶碗はすぐに空っぽになりました。「お代わりお願いしまーす」、私は茶碗をテーブルの通路側に置きました。ちょうどそのときOLさん達がカウンター席から立ち上がり、会計のために私のテーブル席の横を通りました。びっくりしました。何と一人のOLさんが私の空になった茶碗を取ってカウンター奥にいたママさんに手渡したのです。予期せぬ一瞬の出来事でした。

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本誌:2021年7月5日号 15ページ

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