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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

カナダの従兄「ジム」

 大正6年生まれの父は5人兄弟の末っ子でした。そのうち次男(私の伯父)と姉(伯母)の2人は戦前のカナダに移民し、それぞれ家庭を持ちました。勤勉な伯父や伯母の家族は当初、温暖な気候のバンクーバー近郊で平和に暮らしていたのですが、太平洋戦争が激化してきたころ敵国人として強制収容所に入れられ大変な苦労をしました。そして冬場マイナス20度になるアルバータ州の僻地に強制移住させられました。伯父や伯母はいわばカナダの暗黒の歴史の生き証人のような存在でした。

 父によれば若き日の伯母は琴が上手な聡明な人だったそうです。伯母には「ジム」という一人息子がいて、彼は伯父の子どもたちと仲良くアルバータ州の新天地で育ちました。ジム少年は計算や数学が得意だったそうで、高校を卒業したあと生涯、電設工事の仕事をしていました。

 伯母はジムがまだ中学生のころ乳がんで早世しました。従姉たちによれば、ジムの母親は常日頃息子にお金を大切にすること、無駄をしないことを言い聞かせてきたので、ジムは大変な倹約家に育ち、結婚もせず、株でコンスタントに稼ぎ、伯父の子どもたちと慎ましく、仲良く暮らしてきたそうです。

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本誌:2020年9月14日号 12ページ

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