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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

パーソナルコミュニケーションのコツ

 あなたはまだそんな人間関係が構築できていない方と、一緒に移動したりと長時間を共にすることになったとき、なんだか憂鬱な気持ちになったりしませんか。いわゆるコミュニケーション上手な人というのがいらっしゃいますね。そういう方は他者と自分との境目にある壁が低く、先輩やいわゆる大物と言われるような方にも臆することがないので、目にかけてもらえたりすることも多く、誰とでもすぐ「友達」になれたりします。そういう方をとても羨ましいと思うことがないでしょうか。

 実は、わたしは羨ましいと思う側の人間です。アナウンス業や講師業でたくさんの人の前で喋っているのに?と不思議に思われるかもしれません。実はコミュニケーションの形は大きく2つに分類されます。まず、パブリックコミュニケーションと呼ばれる、1対多の関係で、話す人・聞く人に分かれるコミュニケーション。もう一つがパーソナルコミュニケーションと呼ばれる、1対1または1対複数名で、話したり聞いたり相互にやり取りをしながら行うコミュニケーション。私は前者には能力があったのですが、後者のパーソナルなコミュニケーションは苦手なのです。たくさんの人の前で話す、話す仕事をしていながら、いわゆる「人見知り」と言ってもいいタイプなのです。

 雑談力、そんな言葉を耳にするようになりました。書店に行くと、雑談をテーマにした本でコーナーが作られていたり、ベストセラーとなっている本もあるようです。実は私の書棚にも雑談に関する本がたくさん並んでいます。私と同じような方が、同じような悩みを抱いてこのような本を求めるからベストセラーになっているのでしょう。

 この人と雑談をしなければ!と思うとパブリックコミュニケーションのスイッチを入れ、インタビューのように質問を繰り返します。世間話で間を埋めることはできますが、親しく関係を作ることはできませんし、帰ったらぐったり疲れています。雑談力を磨きたいと本屋さんで本に手を伸ばすことに。しかし、いくら本や教材で「雑談力アップのテクニック」を学んでも悩みは解決することはありませんでした。

 そんな私が、パーソナルコミュニケーションの悩みを手放して、楽になることができたのはアドラー心理学の学びの一節でした。アドラー心理学を生かすコミュニケーションを学んでいる時、私の胸にズキンと突き刺さったのは、「勇気のある人はいつもウエルカムの姿勢で、すぐに人と仲良くなる」「勇気のある人はくつろいでいる」という2つの言葉でした。パーソナルコミュニケーションに苦手意識があり、心の奥では人見知りだった私には、この2つの言葉はまっすぐに響いてきたのです。すぐに人と仲良くなれない私は勇気がなかったのか…その言葉は一瞬ショックでしたが、すぐに希望に変わりました。

 わたしは周りの人を敵だと思っている、評価されると思っているから緊張していたのか?そうか、周囲は仲間だと思って、くつろいでいればいい、それだけなんだと…。この人と世間話をしなくては!この人に、うまい一言を返さなくては!そう思っているということは緊張しているということ。緊張しているということは「この人は私を評価する人で、この人は敵、仲間ではない」と思っていること。それではコミュニケーションがうまくいくはずはありません。

 今でも、パーソナルコミュニケーションの場が得意になったわけではありません。しかし、「今、くつろいでいるかな?」とセルフチェックをするようにしています。この人は仲間だと思って、くつろいでいればいい。このことを意識するだけで、コミュニケーションに失敗した、私はダメだと落ち込んで帰ってくることはぐっと減りました。

 少し手厳しい言い方かもしれませんが、人見知りも、緊張しがちなことも、勇気が足りないだけなのかもしれません。周囲の人は仲間だ、あなたを評価しようとしているわけではない。心の奥でそうつぶやいてみてください。ふっと楽になるかもしれません。

本誌:2020年8月24日号 23ページ

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