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従来手法を単にAIに置換した発明

 Q ある医療分野において、回帰式モデルによって入力データから出力データを推定する推定システムが知られているのですが、この回帰式モデルをAIに置き換えた推定システムは特許されるのでしょうか。

 A 多層構造のニューラルネットワークを用い、大量のデータによるディープラーニング(深層学習)等によって生成される学習済みモデルは、AI(人工知能)等と呼ばれ、既に様々な分野で注目され活用されています。このためAIを用いたシステム等の特許可能性に関するお問い合わせをいただくようになってきました。

 AI関連技術の特許審査は、AI特別のものではなく、基本的にはコンピュータソフトウエア関連発明の審査基準等に基づき行われます。ご質問の件では、特に進歩性を満たすか否かが問題と考えられます。進歩性は、出願された発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」) が、先行技術(通常、出願時の公知技術)に基づき容易に発明できないことを言います。

 本件事例においては、(1)ご質問の通り、この医療分野において、入力データから出力データを回帰式モデルによって推定する推定システムが従来から知られており、かつ(2)一般的に、入力データと出力データとを含む教師データを用いてニューラルネットワークを学習させることで推定システムを構成し、その推定システムを用いて推定することが周知の技術になっていることを前提として考えます。これら(1)及び(2)を先行技術とすれば、(1)の回帰式モデルを(2)の学習済ニューラルネットワークにより置き換えて推定システムを構成し、この推定システムによって推定を行うことは、当業者であれば容易に発明することができたものとして特許されないのが原則であると考えられます。

 しかし、これは従来手法(ここでは回帰式モデル)を単にAIに置換した場合であり、これまでの従来手法では採用されていなかった新しい入力データを用いたり、特定の前処理を施した入力データを教師データとして学習させることで、予測できない顕著な効果(例えば、推定精度が格段に向上する)を奏するような場合には、当業者であっても容易に発明できないとして特許されます。

本誌:2019年7月8日号 31ページ

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