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[知的財産] 商標権侵害の損害賠償額

弊社の製品に付けている商標が、A 社の商標権を侵害するので訴える可能性もあるとの警告書をA 社から受け取りました。もし、訴えられた場合に弊社からA 社に支払う損害の賠償額はどのように決められるのでしょうか。

A : 通常、下の推定規定① ~ ③ による

商標権者が商標権侵害につき民事訴訟を提起する場合、侵害行為の差止、侵害行為により被った損害の賠償、そして侵害行為により業務上の信用が害された際の信用回復措置等の請求を検討します( 前号に詳しい)。

損害賠償請求は、本来、商標権者が自らが被った損害額を立証し、その支払いを侵害者に求めるものですが、損害額を直接立証することは困難であることが多いため、次の① ~ ③ の推定規定が商標法に設けられています。

① 侵害者が数量N の侵害品を譲渡( 販売を含む) した場合であれば、数量N の商品を商標権者が譲渡した場合に商標権者が得る利益分を損害額と推定します。この① は商標権者が単位数量当たりの商品を譲渡した場合の利益額P 1に数量N を乗じた額( P 1 × N ) を損害額とするものですが、侵害がなかったならば数量N の商品を商標権者が譲渡して商標権者は額( P 1 × N ) の利益を得られていたはずという考え方です。このため① は、商標権者が侵害品に代替可能な商品を譲渡していなければ適用できませんし、侵害がなくても数量N 全部を商標権者が譲渡できなかった状況であれば減額されます。例えば、侵害品としてN = 50 個が販売されても、商標権者の製造能力等からは4 0 個しか販売できなかったものであれば額( P 1 × 4 0 ) となり、侵害品がなければ侵害品の購買者のうち2 割しか商標権者の製品を購入しない( 例えば、8 割は第三者の製品を購入する等) と考えられれば額( P 1 × 1 0 ) となります。

② 侵害者が侵害行為により利益を受けているときは、侵害者の利益分を損害額と推定する規定です。② は侵害者の侵害品の単位数量当たりの利益額P 2 に数量N を乗じた額( P 2 × N ) を損害額としますので、② を使えば商標権者の利益額P 1 を侵害者に知られずにすみます。

③ は商標権のライセンス料相当額( 商標の使用料) を損害額と推定する規定です。

以上の通り、多くの場合、商標権者が自らの損害額を直接立証するのは困難であるため、上記の① ~ ③ のいずれかの推定規定を用いて決められます。

笠原特許商標事務所
弁理士・所長
笠原 英俊氏
岡山市北区野田2-7-12
TEL086-245-0440

本誌:2014年2.10号 21ページ

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