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甘柿、渋柿、苦い柿

 今年は寒波の襲来が遅く、11月下旬になってやっと朝晩冷え込みがきつく、日中も晴天下、空っ風が吹くようになりました。干し柿づくりに絶好の季節です。まだ大気の中に晩秋の温もりが残っているとき柿を干すとカビがきて失敗します。

 しかし、我が家の干し柿ができるのを心待ちにしているのは人間様ではなく野鳥とネズミたちです。父は腎不全でカリウムの多い柿は禁忌、私は糖質制限ダイエットの最中で糖質のかたまりの果物はほとんど口にしません。

 そんな食べもしない干し柿なんか命懸けで梯子に登り、徹夜で皮むきしてまで作ることはないのですが、柿の実を木の上に放置しておくとカラスがつつきに来て食べ残しをベチャベチャ道に落としていくし、腐った柿の実が自然に落ちて学校帰りの小学生でも直撃したらおおごとです。

 数年前の大豊作の年にも柿の処分に困って動物園の猿や象に食べてもらおうと甘柿を段ボール2箱に詰めて持っていったのですが、動物園にしてみればその程度の量の柿などありがた迷惑だったようで、以後動物園に持ち込むのは自粛しています。

 さらに昔の苦い苦い柿の思い出。まだ大阪の大学図書館で働いていたころ、週末岡山に帰り収穫した柿をリュックサック一杯詰め込んで大阪に持ち帰ったことがあります。重さにして10数㎏あったでしょう。新大阪駅で満員の地下鉄に乗り換え、重たいリュックを「よいしょ」と網棚に乗せた……はずだったのに、あろうことかリュックはスローモーションの軌跡を残しながらそのままドスっと座席に座っていた着物姿の中年女性の頭の上に落ちました。

 なんと棚には金属製の横棒はあったのにそこだけ網が張ってなかったのです!平身低頭謝罪を繰り返す私に周囲の乗客達の嘲笑と忍び笑いが聞こえてきて穴があったら入りたい思いでした。おばちゃんはカンカン。「あんた、電車、降りてんか!」。

 病院、警察、慰謝料…と最悪の展開を覚悟しました。ところがです、私の職業を聞かれたので「○○大学で働いています」と答えたら、なぜかほんのり、おばちゃんの顔から怒りが緩み「あら、○○大学なの。まあ今日のことはええわ」と無罪放免してくれました。このときほど我が職場の名前に感謝したことはありません。

本誌:2011年12.5号 14ページ

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