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病気は時代とともに

 知り合いの若者が4月の就職を前に副鼻腔炎(蓄膿症)の手術を受けることになりました。ためらう彼に手術を強く勧めたのは、私自身子供のころ蓄膿になり長期間苦しい思いをした経験があるからです。

 保存的療法ではどうにもならずついに中学生の時、今から思うとかなり手荒な手術を受けました。40年後の今日では、医療技術は劇的に発達し、医師は鼻の穴から細い内視鏡を差し込み、モニターに映し出される画像を見ながら最小の侵襲で最大の効果が出るよう手術を進めていきます。知り合いの若者も一週間もすればすっきりとして退院してくることでしょう。
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 鼻の病気といえば、昔は小学校のクラスにたいてい一人や二人は“青洟(あおばな)君”というあだ名を頂戴しているような子供がいました。洟を学生服の袖でぬぐうので、袖口がいつもテカテカ光っているような子供達。

 今どきそんな子供は皆無です。栄養状態がよくなるとともに自然と青洟君も日本からいなくなってしまいました。それでは耳鼻科医院は閑古鳥が鳴いているかというと、ぜんぜんそうではありません。蓄膿が退場したのと入れ替わりに花粉症とアレルギー性鼻炎が主役に躍り出て、春先の今日このごろはどこの耳鼻科も満員御礼の大盛況です。

 同じように、戦後まもなくのころは疥癬(かいせん)など皮膚病の子供が多く、イジメの原因にもなっていました。しもやけ、あかぎれ、こんなものも日本が豊になるとともにいつのまにか子供達から消えていきました。

 そしてその結果、皮膚科の先生方が困っているかと言えば、これまたアトピーという強力な新顔が登場し皮膚科医院は赤ちゃんや子供であふれています。
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 いったいどうしてこのようなことになるのでしょうか? 寄生虫学の権威、藤田紘一郎先生によれば花粉症やアトピーは日本人の体から寄生虫がいなくなったからだそうです。アトピーの原因物質が体内で寄生虫の糞と結びついて無害なものになっていたのに、寄生虫がいないと悪さをする物質が人体を攻撃してしまう、というような理屈らしい。(「体にいい寄生虫」、「清潔はビョーキだ」等より)

 学問的なことはともかく、事実あまりきれいといえない川で水浴びしているアジアやアフリカの少年達の皮膚は健康そのものでつやつや黒光りしています。40年前の我々もああだったのでしょう。

 でも今のお母さん方にとってかわいい子供のお腹に寄生虫がいてもかまわないなんて想像するのもおぞましいことですよね。私も藤田先生のように体内にサナダムシを飼ってみようなどという酔狂なまねだけはご免です。(康)

本誌:2004年3.1号 16ページ

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