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シルバーカー

 交差点で信号待ちしているとおばあさんが手押し車を押して道を渡っている光景によく出会います。なかにはかなり高齢な方もいらっしゃいます。この手押し車にはシルバーカーという立派な名前があり、シルバー世代はみんな使っているかというとそうでもありません。

 よく観察するとこれを押しているのはほぼ100%女性です。今までにおじいさんがシルバーカーを押して歩いているところを目撃したことは一度もありません。

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 おじいさんによく似合うのはステッキということなのかもしれませんが、ステッキをついたおじいさんもほとんど見かけません。男はもともと若い時から買い物などに歩いて外出する習慣があまりないせいか、高齢になるとますます出不精になってしまう。若い時かっこよく車を乗り回していた男が年取ったからといってシルバーカーなんか恥ずかしくて押せるか!という反発もあるのでしょう。

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 病気の治療についても同様の傾向があるように思えます。どこか具合が悪くなった時、女性は気楽に病院に行くけれど男はあらゆる抵抗を試みる、これがともに80代半ばの我が両親の姿です。

 男性はプライドが邪魔して年を取るとますます意固地になったり意地悪爺さんになったりで、どうやら女性ほどじょうずに年を取れないような仕組みが遺伝子に最初から組み込まれているのかもしれません。

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 その結果は厚生労働省の平均寿命に関する統計にはっきりと出ています。平成12年の全国平均で男性が77.7歳であるのに対して、女性は84.6歳です。その差は6.9歳。ということは、おじいさんはシルバーカーを押して散歩するのが嫌いなんじゃなくて、そもそも元気なおじいさんがおばあさんにくらべて圧倒的に少ない! 

 町でおじいさんを見かけないのも当たり前、という結論になりそうです。なんだか「ニワトリが先か卵が先か」という話みたいになってしまいましたが、このことは年金受給額が女性より多い男性が7年も早く受給資格を天に返上してしまうということであり、逼迫した年金財政にとってはまことに都合のいい話です。やはりシルバーカーにはおばあさんがよく似合うようです。(康)

本誌:2004年2.11号 20ページ

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