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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

押し込み強盗

 高齢となった両親が晩年まだ田舎家で2人だけで自立して生活していたころ、実家の居間のテレビ台のガラスケースの中に大きな玄(げん)翁(のう)が置いてありました。玄翁とは大きな金槌のことで持てばずしりと重い。私はなぜこんな物騒なものをテレビ台の中に置いているの?と父に尋ねました。父曰く、「夜中に強盗が入ってきたらこれで戦うんだ!」と言っていました。

 私は「そんなアホな!こんな貧乏くさい田舎家に強盗なんか来るわけがない」と父に言ったものでした。「親父も高齢になって被害妄想が激しくなってきたな」とも思いました。しかし今、私自身、当時の父母の年齢になって、しかも両親が暮らしていた家に暮らしてみて、父の危惧があながち被害妄想だったとも言えない、と感じます。夜中に柿の実が屋根の上に落ちる音がしてもびっくりして飛び起きるこのごろです。

 東京周辺で頻発している押し込み強盗の容赦ない卑劣な犯行を連日見せられては、手元に何らかの“武器”を置いておくことは、実効性はともかく精神衛生上、有用であるような気がします。それにしてもかつての平和で穏やかな日本がどうしてこんなことになってしまったのでしょうか。

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本誌:2024年11月18日号 23ページ

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