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連載記事杉山慎策の経営学考察

国富論を読む6

 繰り返しになるが、スミスの主要テーマの一つは豊かになるためには分業により生産性が上げることである。分業がスタートしたばかりのプリミティブな社会では、物々交換が行われていた。しかし、物々交換においてはいろいろな不便な事態が生じていた。牛と魚を交換したいと思っている人がいるとしよう。農場経営者が鯛を夕飯の食事に欲しいと仮定しよう。鯛一匹と牛肉の正当な交換比率がリブロース200gだと仮定しよう。リブロース200gを得るためでも、牛一頭をいったん屠殺しなければならない。冷蔵設備の無い時代、他の部位が直ぐに売れるとは限らない。牛の所有者が残りの部位の処分に困ったことは容易に想像できる。

 古代人は早い段階から物々交換ではなく普遍的な交換の手段を求めた。貝殻、石、銅、金、銀などが交換の手段として使用されるようになった。管理のし易さから段々と銅や金・銀などの金属が交換の手段として使用されるようになった。

 岡山が誇る吉岡銅山から採掘され、長崎の出島から欧州に輸出された棹銅は純度の高さゆえに通貨としても一部活用された。吉岡銅山は一時期世界有数の銅鉱山であった。

 金や銀などが貨幣として使用されるとその純度や重さをどのように保障するかが課題となる。ここに国家権力(含む王)が介入する余地が生まれる。金や銀の純度と重さを国や国王が保証すれば交換が行われる度に重さを計ったり、純度を確認する必要がなくなる。純度を調べるためにはいったん金属を溶解する必要が出てくる。取引を行う毎に純度を調べることは煩雑すぎる。

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本誌:2024年5月13日号 17ページ

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