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連載記事社説

人を育てることこそ本当のSDGs

 岡山県の8月の有効求人倍率は1.53倍と全国の1.29倍を上回っており、依然として県内企業、特に規模の小さな事業者にとって、人手不足、採用難は深刻だ。取材先の企業からは、せっかく採用した人材を戦力として育成することの難しさを嘆く声もたびたび耳にする。

 そんな状況下にあって、包装資材、吸音材の製造販売を手掛けるタケシンパッケージ㈱(倉敷市)の新谷啓一郎社長が、岡山県立大学との連携で、新しい「人材教育」に力を入れている。新谷社長の目に映る最近の若者気質は「素直で指示されたことはきちんとこなすが、物事を徹底的に掘り下げる力が足りない」というもの。「仕事で大切なことは、自分の役割を自ら探す姿勢」という持論を持つ新谷社長だけに、若者の淡泊な仕事ぶりを目にするたび、モノづくりの将来に危機感を抱いていたという。

 昨年心臓病を患い、残された人生についてじっくり考え、個性を大切にし過ぎるゆとり教育以降の教育の在り方や、スマホ一つで何でも調べられるゆがんだ情報社会へのアンチテーゼとして、「大切なことは周りの大人が教えるべき」と自ら指導することを決意。岡山県企業と大学との共同研究センターの紹介で、県立大デザイン学部の「プロダクトデザイン」の授業で6~8月に講師を務め、吸音材を題材にペルソナ設定に基づく商品デザインから、ポートフォリオの作成までみっちりと指導したという。

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本誌:2023年10月16日号 17ページ

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