通称ジョン万次郎は文政10年（1827年）1月1日に高知県土佐清水市中浜で貧しい漁師の次男として誕生した。9歳で父親を亡くしていた万次郎は天保12年（1841年）14歳の時に仲間と漁に出かけて遭難した。一緒にいた仲間は船頭の筆之丞（ハワイで伝蔵に改名）、筆之丞の弟の重助、同じく五右衛門、近所の漁師の寅右衛門の5名であった。

　数日間漂流した後に無人島の「鳥島」に漂着した。食料や水の確保に苦労したが、143日後にアメリカの捕鯨船ジョン・ハウランド号により奇跡的に救出された。この船の船長であったウイリアム･H･ホイットフィールドは5名をハワイに連れて行き生活ができるように支援した。ホイットフィールド船長は一番若い万次郎を気に入り、本人や船頭の筆之丞の了解を得てアメリカに連れて行き教育することになった。ジョン万次郎はジョン・ハウンドランド号の名前から「ジョン・マン：John Mung」と名乗るようになった。

　ジョン・ハウンドランド号はジョン万次郎を乗組員としてグアムなどで漁をし、その後日本近海で鯨を取り、一端太平洋を南下し、ケープホーンを回り一路北アメリカに向かった。パナマ運河が完成するまで太平洋から大西洋に入るにはこの海路しかなかった。ジョン・ハウンドランド号は1843年アメリカ最大の捕鯨基地のマサチューセッツ州ニューベッドフォードに戻ってきた。万次郎は日本人として初めてアメリカの地を踏んだ。ホイットフィールド船長は自分の故郷のフェアヘイブンに連れ帰った。ホイットフィールド船長は自宅の再建のために友人のジェームズ・アレンにジョン万次郎の当面の教育を委ねた。彼の妻が塾の先生をしていたので、ここで英語の基礎を学ぶことになった。

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