連載記事杉山慎策の経営学考察
山内容堂3
吉田東洋は伊勢藩の漢学者である斎藤拙堂から 「土佐の吉田は名剣にして鞘なきが如し。必ず自ら傷くるに至らんか」と言われたように、恐らく切れ者ではあるが、しかし、そこには若干の狂気も持ち合わせていたのであろう。悲運の最期を遂げることを予見していたかのようである。
吉田家の遠祖は藤原秀郷とされ、相模の国の山内荘を領し山内を名乗っていたが、その後山内と吉田の二つに分家し、この吉田が土佐に移り、長岡郡岡豊山の麓の吉田村に住んだ。長曾我部の重臣であった。
関ヶ原の戦いの後多くの長曾我部の家臣は土佐を去ったが、東洋の先祖は遠州掛川から入部した山内家に仕えることになった。当初は郷士としてであったが、後に上士としての地位が与えられた。知行200石の馬回り組などをしていた先祖はいたようであるが、それ以降は不明である。
東洋の祖父吉田正幸は継嗣がいなかったために百々氏から光四郎正清を養子に迎えた。東洋はこの正清の四男として文化十三年(1816年)に城下帯屋町で生まれた。母は鉋代(かなよ)という。三人の兄は全て早世したので、文政六年(1823年)に藩主山内豊資(やまうち・とよすけ)に謁見し、正幸の嗣子として認められた。幼名郁助(いくすけ)、元服して官兵衛(かんべい)と改め、正秋(まさあき)の実名を与えられた。剣術は一刀流指南役の吉田忠次に、文学は儒官の中村十次郎の下で学んだ。優れた能力を有していた東洋は師を超えるようなレベルに到達していたようで、中村十次郎は「吉田が来て、いろいろ能く教えてくれる」と評していたと伝わる。
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