WEB VISION OKAYAMA

連載記事なんでもQ&A[法律]

労働者該当性について

Q業務委託契約書を交わした者から、時間外手当を請求されました。支払わなければならないのですか。

雇用契約かどうかは実質で決まる

A労働者は歴史的にみて使用者に比べて弱い立場にあり、給料が生活の糧となることから、法律によってその立場が保護されています。そのため使用者が労働者を雇い入れる場合には、最低賃金、時間外手当を支払うなど、労働者の地位に配慮した義務が課せられることになります。

 使用者が労働者を雇い入れる場合、雇用契約書を交わすのが通常です。では、業務委託契約書を交わせば、このような負担を免れるかというとそうではありません。

 労働者であるかどうかは、形式によってではなく、実質によって判断されるからです。例え業務委託契約書という形式の契約書を交わしていたとしても、その実質において、労働基準法等の法律の「労働者」であるといえれば、労働基準法等の適用が認められるため、上記のような負担を免れることはできません。

 労働者にあたるかどうかはどのような基準によって判断されるかというと、一般的に使用従属関係があるかどうかが重要であると考えられています。ただ、この使用従属関係があるかどうかという判断も、様々な事情を考慮して判断されるとされていることから、一義的に判断することは困難です。

 例えば、裁判例では使用従属関係の有無は、使用者とされる者と労働者とされる者との間における具体的な仕事の依頼、業務指示等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督関係の存否・内容、時間的及び場所的拘束性の有無・程度、労務提供の代替性の有無、支払われる報酬の性格・額、業務用機材等機械・器具の負担関係、専属性の程度、使用者の服務規律の適用の有無、公租などの公的負担関係、その他諸般の事情を総合的に考慮するとされるものもあります(東京高裁平成14年7月11日判時1799号166頁)。

松永法律事務所 
弁護士 松永 憲一郎氏
岡山市北区野田屋町2-6-22 福中ビル第一 3階
電話番号 086-238-7422

会員申し込みはこちらから

本誌:2019年7月22日号 31ページ

PAGETOP