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連載記事杉山慎策の経営学考察

「あなたの会社では社員をどう呼びますか」3

 前回自社の社員を「WORKER(ワーカー)」と呼ぶ危険性について触れた。筆者は別の会議で自社の社員を「ワーカー」と呼ぶケースに最近遭遇した。確かに政府が外国人労働者受け入れの方針を発表する場合は「foreign worker」で良い。もう少し丁寧に言うとすると「guest worker」ということも可能である。大切な人材なので、「ゲスト・ワーカー」という呼称を定着させたい。

 しかし、自社の社員を「ベトナムのワーカー」とは絶対に言わないし、言ってはいけない。日本人だけが「社員」で、外国人の自社の社員を「ワーカー」と呼べば、それは即「差別」となる。前回にも触れたが、責任者が安易にそのような呼び方をした場合、メディアで批判され、責任者が辞任する事態に陥る可能性もある。安易に「ワーカー」という言葉を使用しないで欲しい。

 政府は国内の労働者人口の減少に対応するために、従来の研修制度から労働者不足が深刻な14の分野について海外からの単純労働者の受け入れを進めている。2018年12月に「特定技能」という新たな在留資格で外国人労働者を受け入れる出入国管理法が成立した。政府は2025年までに50万人を受け入れる予定である。2017年末で外国人労働者数は約128万人であり、2025年頃には200万人近くになる。

 総務省、国立社会保障・人口問題研究所、パーソル総合研究所の予測によると、今後30年で国内の労働人口は1300万人減少する。確かに、AIやIoTなどの発展により、生産性の向上が見込まれるが、しかし、約200万人の外国人労働者では到底補いきれない。外国人労働者を含めてこれから人材確保は一層難しくなり、人材の確保ができないため事業の継続が困難になることも予測される。既にコンビニエンスストアの一日24時間営業・年中無休体制を維持することが困難になっている。このような情勢下で、差別を含むような発言は厳に慎むべきであると考える。

 筆者がロンドンに暮らしていた1990年頃、既に多くのEU諸国の主要都市、例えばロンドンでは、外国人比率が10%を超えていた。日本は全体でみると2%弱であるが、今後5%を超えるようになると推定される。

 アメリカやカナダは移民により成り立っている国である。最近入国管理が厳しくなってきているが、基本的には入国後、大学などに設置されている語学学校で英語とアメリカやカナダの生活の仕方などを学び、その後は普通のアメリカ人あるいはカナダ人として扱われる。そして、多くの移民は移民の多い地区に固まって住むことになる。欧米では、文化的に同化しないことと、一定の地域に集中して住むことにより、外国人の排斥問題が起きている。

 日本でも地域によれば外国人が異常に多い都市もあるが、依然として欧米のような深刻さはまだ未出現である。しかし、近い将来同じような問題が惹起することが危惧される。

 京都には太秦という地域が右京区にある。映画の撮影所で有名なところである。この太秦は元々渡来系の秦氏が居住していた地域である。岡山も温羅は百済系であると言われる。秦氏や温羅の一族も時間をかけて同化したと思われる。日本国内にはこのような地域が多くみられる。日本人は多様性を受け入れるのが歴史的に見て上手な国民だと思われる。考えなければならないのは、こちらの都合だけを考えて短期的人手不足を安い外国からの労働者で補い、それが終了すれば帰国させるという安易な考えは持たない方がよい。日本は多くの渡来人を受け入れ、時間をかけて世界で最も同質的と言われる民族を作ってきた。

 上手に同化させるには日本語や日本での生活の基本を教育するだけでは足らない。2019年3月15日発表の外国人労働者新制度の政省令交付によれば、
   ・報酬は日本人と同等以上の額
   ・報酬は預貯金口座に振り込み
   ・悪質ブローカーに仲介させない
   ・日常生活を支援する計画を策定
することの重要性が発表されている。当然のことながら、「同一労働同一賃金」であるべきである。賃金のみならず、空き家を活用した定着の推進など日常生活全般に日本的オモテナシの心で対応すべきである。その意味で外国人労働者はお荷物ではなく、正に「ゲスト・ワーカー」なのである。外国人労働者の受け入れに積極的でない企業は人材不足で苦労することが予測される。

本誌:2019年4月1日号 19ページ

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