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連載記事マネーの道しるべ49

世界は存在しない

  • 森康彰氏

 今回は、本を2冊紹介したいと思います。共通点はどちらも哲学について書かれているということと、NHK出版であるということです。どちらも仕事から帰ってきて家族が寝静まっているリビングでつけたテレビで知りました。一つは、「マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する」。番組プロデューサーである丸山俊一氏と制作班で内容をまとめたものです。番組は最後まで見ることなく眠ってしまったので、本と番組の比較はできませんが、「マルクス・ガブリエル」で検索し、関連書物を数冊読んだ中では秀逸でした。新実在主義から見た日本がどうであるかを知ることで混沌とした社会を俯瞰して眺め、整理することができます。また、戦後の実在主義から構造主義、ポスト構造主義への変遷と新実在主義の流れを知ることで、歴史を哲学的観点から捉え直すこともできます。また、ロボット工学者の大阪大学大学院、石黒浩教授との対談は、人間について再度考え直すきっかけと方向性を得られます。

 もう一つは「オルテガ『大衆の反逆』」。「100分de名著」という番組のNHKテキストです。全4回に渡って放送されたスペインを代表する哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセット氏の「リベラル」から始まり、最後は保守派の評論家である西部邁氏に帰着する面白い展開をみせる本となっています。リベラルや保守が「パヨク」や「ネトウヨ」によって、もっと言えば政治家たちに利用された結果、随分と誤解されて浸透していることを知りました。また、哲学としての「リベラル」や「保守」とは、どういった環境から生まれたのかを知ることで、社会に対して新たな視点を自分の中に立脚することができました。

 私自身は大した学歴も経歴もなく、自分一人で仕事を始め、少しずつ事業規模を大きくしてきたものの、何かの評価軸とは無縁に生きているため、しばしば苦悩します。この2冊でその根源の一部を理解できたように思います。また、孤独であることの大切さをより理解できたことで苦悩を受け止められるようになったと感じています。

●森康彰●2年間、保険代理店に勤めた後、2008年に保険コンサル会社㈲e.K.コンサルタントを設立。2014年に東京支社を設けるなど、首都圏へも業務を拡大中。 敬愛する人物は、稲森和夫、立川談志。

本誌:2019年3月25日号 18ページ

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