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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

真冬のカナダ

 カナダの従姉キャサリーンが住んでいるレスブリッジはロッキー山脈の東に位置する津山市ぐらいの大きさの町です。連日気温はマイナス20度前後、ときにはマイナス30度にもなる極寒の地。同じカナダでもバンクーバーは太平洋がもたらす温暖湿潤な風の影響で年中快適な土地柄であるのとは対照的です。

 戦前カナダに移住した伯父はバンクーバーに住んでいたのですが、太平洋戦争が激化し、日本人であるという理由だけで強制収容所に入れられ、ついにはロッキー山脈を超えたアルバータ州に追いやられました。アメリカ国境に近い寒村で冬の寒さ、夏の干ばつと戦い、小麦と砂糖大根を作りながら8人の子どもを育てた不屈の魂の持ち主でした。
8人のうちでも7番目のキャサリーンや末っ子のブルースは貧困と寒さの記憶はほとんどないよう。しかし80代になる上の兄弟姉妹たちは幼かったころマイナス20度の寒風が吹きすさぶ小屋のような家で厳しい冬を耐え、畑仕事を手伝ったものだと今でもつらそうに話してくれます。

 私自身も一度だけですが、真冬にカナダのカルガリーを訪ねたときマイナス20度の世界を体験したことがあります。高層ビルが建ち並ぶダウンタウンのオフィス街を興味本位でちょっと散歩したのです。いくら寒くても歩けば体がぽかぽかしてくるはず、と思ったのが大間違いでした。歩けば歩くほど体から熱が奪われこのまま路上で凍死するのではないだろうかという恐怖感に襲われたことを今でもよく覚えています。

 そんなフリーザー状態のカナダでも人々は生活を楽しむことに積極的です。キャサリーンの夫のラルフは80を過ぎていますが週に3回はカーリングをするのに忙しい。弟のブルースはポルトガル、姉のミキ夫婦はハワイへ、娘夫婦はメキシコへ避寒旅行に行くそうです。キャサリーンはシニア世帯住居の役員をやっていて忙しいからこの冬は家にいるとメールに書いてきました。

 カナダの冬は寒いと言っても家の中ではTシャツなのが日本との大きな違い。日本でも最近は住宅の断熱がしっかりして暖かいと思います。ところが、両親が残した戦後の安普請の我が家ではエアコンとファンヒーターを併用してもなお首筋にまで寒さが忍び込んでくる始末。カナダよりも寒い2月の我が家です。

本誌:2019年3月11日号 13ページ

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