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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

セルフトークを意識する

 前回の連載では、話す内容はゴールから逆算して、伝える内容を決めていくのだというお話を、会社説明会での役員あいさつの場を例にとってお伝えしました。最も重要なポイントは、アンテナを聞き手に向けて、声に出さない「心の声」をキャッチし、その心の声に応えるようにすること。すると、「話して伝える」結果として、望む行動を生み出すことができるのだとお伝えしました。今号では、その「心の声」をキャッチするという点について、もう少し詳しくお伝えいたします。

 人は「言葉」で思考しています。ものを考えるとは、頭の中で「言葉」を浮かべることなのです。心理学ではこれを「セルフトーク」と言います。例えばクライアントの元に車で移動していて、アポイントに遅刻しそうな時。目の前の信号が短く、なかなかこの交差点を脱することができそうになければ、頭の中で「やばいな、間に合うかな」「前の車信号が変わったら、さっさと動きだせよ!」「こっちの道は間違えたな」「さっきのところで脇道に曲がっておけばよかったな」などと、頭の中で言葉を浮かべています。先日開催した「役員のための会社説明会での伝える力セミナー」でそのことをお伝えすると、6人中2名の方が「そんな、自分に向けての独り言のようなことは言っていない」とおっしゃいました。どうやら理系の男性の中には「セルフトークがある」と言うことが理解できにくいようです。しかし私の講義を受講しながら、「え~?自分に話し掛けるみたいなことしてないよ」と言葉で思考したはずで、そのことがセルフトークとなっていると言うことに気がついていないだけです。

 頭で「いい」と思うことと、心が「いいな!」と動かされるということ。この二つは大きく違います。頭でいいと思う、という状態は条件や待遇で説得することができます。しかし、より良い条件があったなら、その人の気持ちはいとも簡単に動いてしまいます。しかし心が「いいな!」と動いた人の気持ちは簡単には翻りません。「頭で分かる」から「心が動く」を目標にしていただきたいのです。

 心を動かすポイントこそ、相手のセルフトークに関心を寄せ、一対多の状況で1人で話しているようでセルフトークとの会話を意識するのです。セルフトークには3種類あります。まず本人が自覚しているセルフトーク。そのうちプラスのものとマイナスのものがあります。たくさんの会社の中から、少なくとも「話を聞いてもいいな」と思ってその場にいる就活生です。

 「この点が良さそうだな」と思っている点があるからそこにいるのです。でも「こうだったら嫌だな」と不安に思っている点もあるはずです。自覚でプラスのセルフトーク「この点が良さそうだな」と思われているだろう点は、具体的な例を伝えながら「やっぱりそうだ」としっかりと伝えます。自覚でマイナスのセルフトーク「こうだったら嫌だな」と言う点は、そのことが誤解であるなら「実は違う」とクリアし、確かにそういう面があるのであれば、価値を転換し「こうとも言える」ということはできないか考えていきます。

 そして最後にもう一つのセルフトークがあります。それは本人が自覚していないセルフトークです。皆さんにも「言われてみたら、そう言うのすごくいいな」と思った経験はないでしょうか。その話を聞くまでは自分の中にそんな希望があることは気がついていなかったけれど、言われてみたら「それ、すごくいいじゃないですか」と思われることが御社の中にないでしょうか。

 それはしっかりと言葉にして伝えておかなければ、伝わることはない、ということです。わが社に関心を持ち、時間を割いてくれた若者が「こうだったらいいな」と期待を持っているだろう、「こうだったら嫌だな」と不安があるだろう。さらに「え!そうだったんですか?それすごくいいじゃないですか」と思われることはないだろうか。そんな分析をしながら「伝える」準備をしていただきたいのです。

本誌:2019年2月11日号 21ページ

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