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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

鬼才木彫家小林陽介遺作展に感動

 NHK・Eテレの長寿番組「日曜美術館」では毎回番組の終わりに全国各地の美術館で開催中の注目すべき企画展を紹介する「アートシーン」というコーナーがあります。手短に展覧会の核心部分にふれ、美術ファンをいやでも美術館まで足を運ぶ気にさせる構成はさすがです。

 先日の日曜日、その「アートシーン」で昨年の晩秋わずか36歳の若さで亡くなった木彫家、小林陽介の遺作展が牛窓の瀬戸内市立美術館で開催中であることが紹介されていました。私はこのような若き天才木彫家の存在自体知らなかったのですが、テレビ画面を通して目に入る映像からでも作品がもつ圧倒的なエネルギーが感じられ驚嘆しました。

 ぜひとも実物の作品を見たい! さっそく電車とバスを乗り継いで瀬戸内美術館を訪ねてみました。ちょうど館長の岸本員臣先生によるギャラリートークが始まったところでした。岸本館長はほとんど無名だった小林陽介の才能をいち早く発見した方で、2011年にはすでに瀬戸内美術館において「小林陽介展 白と黒のはざま」という企画展を開催していたという炯眼には驚かされました。

 小林の木彫はほぼすべてが大きな原木から人物や動物を彫り出したもので、極限まで無駄な部分をそぎ落としています。いや、胴体や骨格など彫像表現に必須な部分までも取り去っているのです。例えば「空ニウカブ顔(平櫛田中像)は100歳翁のほぼ等身大の作品ですが、リアルな頭部を支えている体躯の部分は大胆に抽象化され、湾曲したシルエットのみで表現。それにもかかわらず、そこには木彫の聖人・平櫛田中その人が飄々とたたずんでいる。田中の魂の息づかいが聞こえます。

 出品リストを拝見したところほとんどの作品は「個人蔵」となっています。2011年の企画展で展示された作品のうち何点かは今では所在不明となっているようです。所有者の家庭で代替わりなどがあったりしたとき、貴重な書画骨董品が失われてしまうことはよくあることです。

 小林陽介の木彫家としての真価はまもなく世界的に知られるようになるでしょう。しかしそうなる前に個人蔵の作品がさらに散逸、行方不明になることは大きな損失です。ぜひともしかるべき美術館で永久保存したい日本の、そして世界の宝物だと思います。(10月21日まで開催中)

本誌:2018年10月22日号 19ページ

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