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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

岡山駅前の桃どろぼう事件に思う

 お昼のローカルニュースで岡山駅前の緑地に植えられている桃の木から桃の実1個を盗んだとしてベトナム人青年が逮捕されと伝えていました。警察は同じ場所で桃の実が300個盗まれた事件との関連を調べているそうです。

 私はこのニュースを聞いて、中学生時代に国語か道徳の教材にあった長野県飯田市のリンゴ並木の話を思い出しました。1947年(昭和22年)、市街地の大半を焼き尽くす飯田大火に襲われた市は防火帯の機能を備えた延長1200m、幅員30mの道路を整備、中央分離帯には飯田東中学校の生徒がリンゴの苗木40本を植え、生徒達の世話によって毎年りっぱなリンゴがたわわに実る立派な並木道ができたという話です。

 教材でのポイントはせっかく実った実が盗難にあうのにも関わらず生徒たちや市民の努力でリンゴ並木が守られているうちに市民の道徳心も育ち盗難事件が減ってきたという点にあったように記憶しています。実際のところは現在でも盗難はあるようですが、ニュースになるようなことではないようです。終戦直後に比べ今の時代、リンゴの消費は低迷し、わざわざ排気ガスにまみれた街路樹のリンゴの実など取っていく人は多くはないでしょう。

 岡山駅前の桃の実盗難事件を改めて考えてみると、駅の緑地に商工会議所の女性グループが桃の木を植えて育てているそうですが、そんなオープンな場所にある桃の実が盗まれたからといって警察に被害届なんか出すことの方がそもそもおかしい気がします。4月、桃の木に花が咲くのを市民や旅行者に楽しんでもらえればそれで十分では? 公開緑地に実った桃の実1個を失敬したからといって逮捕されるのなら、市民や子どもたち、訪日旅行者たちがいったい桃の実はどのように桃の木に成っているのか興味がわいても桃の木に近づくことさえはばかられます。

 桃の実はリンゴやミカンと違い、品種ごとに一斉に熟し収穫適期は1週間もありません。もし盗まれるのが嫌なら女性会会員が徹夜で番をすることをお勧めします。ゴリゴリの状態から熟れるまでほんのわずかな日数です。私はそんなことよりも飯田市のように少々とられたからといって大騒ぎなどせず、長い目で桃を紹介する本来の目的のために頑張っていただきたいと思います。

本誌:2018年7月16日号 14ページ

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