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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

不適切な行動への教育的指導

 前号では「困ったあの人」の不適切な行動との向き合い方をお伝えいたしました。今号では、その不適切な行動にどのように教育的な指導を届けていくかをお伝えしていきましょう。

 ではまず、最近イラっとした出来事を一つ思い浮かべてみてください。相手の行動が不適切に感じる時、こんなふうにひとつひとつ検証していくことにしましょう。

 ①相手は適切な行動を知っているでしょうか、それとも知らないのでしょうか。知らないのであれば、この場での適切な行動を伝えれば良いということになります。相手はどのような行動が適切な行動かを知っているとなれば次のステップです。

 ②適切な行動とは何かを知っているのに、うまくできないのか、知っているのにやらないのかのどちらかということです。「適切な行動とは何かを知っているのに、やり方を知らない」のであれば、技術として指導すればいいということになりますね。

 問題なのは「適切な行動を知っている、どのようにすればいいかも知っている、けれどそうしない」という領域です。その場合は次の二つの可能性を考えてみたいのです。

 ③-A  適切な行動でうまくいくと信じていない。どうせうまくいくわけない、と勇気をくじかれている状態です。

 ③-B 不適切な行動で目的を達成している。注目を集めたり、大目に見てもらったり、といったことでしょうか。

 このように細かく分析していくと、「不適切な行動」にイライラしているだけではなく、どのように向き合っていくかが見えてきます。ある男性が、職場でイラッとさせる人のエピソードを教えてくれました。「社内の男性が、いつも締め切りギリギリに発注してきて、悪びれた様子もなくて、本当に迷惑している。ちょっと考えれば分かることで、普通ではありえない」話しているうちに、イライラする気持ちが増してきたようで、後半は語気を強めながら語っていました。

 この男性と一緒に不適切な行動のステップをひとつひとつ検証していくと、最初は、「適切な行動は当然知っているだろう、なのにやらないんだよ」と③の段階だと言っていた男性。でも③-Aかな③-Bかなと検討していくうちにふと気がついたようでした。

 「ギリギリに依頼しても結局対応してもらっているということだから、不適切な行動で目的を達成しているという③-Bの領域かな?いやそもそも、ギリギリにお願いすることでどのように周囲に負担をかけているのか、我々がどんなに苦労しているのかということを知らないのかもしれない、ということは、適切な行動は知っているけど、どうすればいいのかをしらない②かな。いや、そもそも今の行動が周囲に負担をかけている不適切な行動だと知らない①なのかもしれない」と、話しながらご自身で気がついた様子でした。

 不適切な行動だと注目しているうちは、相手はまるで悪意を持っている敵のような存在でした。しかし、こうして検証してみると「適切な行動を伝える」ことから始めればよかったことに気がつきます。「こちらの立場を理解してもらって協力してもらう」ことで相手は敵ではなく仲間になります。

 アドラー心理学では「正の注目」「負の注目」という言葉があります。できていないところに注目して「マイナスな行動を潰そうとする」のが負の注目。反対にできているところに注目するのが「正の注目」です。例えば、子供が騒いでいる時に「静かにしなさい」というのが「負の注目」、静かに本を読んでいる時に「楽しそうね」「本を読んでいてくれたら、夕食作りが早くできて助かるわ」というのが「正の注目」。問題を減らそうとするのではなく、良い行動を増やそうとする、といえるでしょう。

 ③の領域に達する、不適切な行動をする人は、勇気がくじかれていると言えるでしょう。だからこそ、間違いを指摘して正そうとする負の注目ではなく、正の注目で勇気のガソリンを満たしてあげることが必要なのです。正の注目、負の注目はアドラー心理学の基本であり、またとても難しいところでもあります。でも、ぜひチャレンジしてみて欲しいのです。

本誌:2018年4月9日号 21ページ
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