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巻頭特集動き始めた県知事選と県政界を席けんする「東大卒」「40代」

首長、国政の現職・新人に続々 政治動向占う新たなキーワードに

  • 岡山県知事選のゴングまであと8カ月(岡山県庁)

 今年は岡山県知事選、倉敷市長選などの首長選に続き、消費税増税問題の行方次第では衆議院の解散・総選挙も予想される選挙イヤー。注目の県知事選挙(11月11日任期満了)は㈱天満屋(岡山市)の伊原木隆太社長(45)が出馬を検討していることが明らかになり、2月14日には前民主党県議の一井暁子氏(42)が出馬を表明。一気に前哨戦が動きだした。また、首長、衆院の現職・新人の顔触れで目を引くのが「東大卒」と「40代」の多さで、伊原木氏まで含めると実に6人(中退を含む)が当てはまる。同時代に日本の最高学府に学んだ者同士、人脈的にも重なる部分が多いようで、選挙を占うキーワードになる可能性もある。担当記者が知事選などを巡る状況を話し合った。

 C 1月末に流れた「伊原木氏が知事選出馬を検討」のニュースは衝撃的だった。

 A 県選出の国会議員らに伊原木氏が直接意欲を伝え、マスコミが一斉に報じた。天満屋グループの関係者に聞いても、一様に驚いたようだった。4年前の選挙では、天満屋グループが県政の転換を訴え出馬した元岡山市職員を支援したものの敗北。その後、県施設の中でも「ドル箱」として知られるコンベックス岡山の指定管理者に同グループが決まるなど“雪解け”を感じさせる出来事もあったが、結果的には倉敷チボリ公園問題などを巡りこじれた両者の関係を修復するまでには至らなかったようだ。

 D 今回の知事選に向け、伊原木一衛会長サイドは対立候補の擁立を模索したようだが不調に終わり、その思いを息子に託す構図か。1月の大阪国際女子マラソンで優勝し、ロンドン五輪出場が有力視される天満屋女子陸上競技部の重友梨佐選手が知事を表敬訪問しなかったのも、「知事と天満屋の関係の象徴」とうがった見方をする関係者もいる。実際のところは日程調整がつかなかったためのようで、県は代表正式決定後の3月にも改めて機会を設ける方針だが、そう思わせるほど両者の溝は深いということか。

 A 伊原木氏の動きを石井正弘知事サイドではどう受け止めているのだろうか。

 B やる気満々。後援会の新年祝賀会では、2012年度にスタートする県政中期行動計画「第3次おかやま夢づくりプラン」の推進へ意気込みを語り、伊原木氏の出馬意欲が伝えられた後に津山で開いた祝賀会でも、正式表明こそなかったが5期目への強い意欲を見せつけた。知事周辺の多くは「だれが出馬しても、知事の性格から引退や国政への転身は120%ない」と言い切る。祝賀会に30人以上の県議が参加したことも、知事陣営としては心強い材料になる。

 D 最近は知事の発言にも変化が感じられる。以前は「まじめ過ぎて面白みに欠ける」というのが知事演説への大方の評価だったが、政権交代後に民主党が陳情窓口を幹事長室に一元化したことにはっきり異を唱えたあたりから雰囲気が変わり、先日もある会合で民主党の政策について「(政権交代前は)地域主権を“1丁目1番地”に掲げながら、今や“番外地”だ」など、声高に批判したのには驚いた。

 C ネックとなりそうなのは多選への批判だが。

 B 知事自身は「清潔な政治姿勢を貫いており、本人の資質の問題」と意に介していないようだ。確かに多選は有利な材料とはいえず、結果的にそれがネックとなり政党の推薦は難しいわけだが、今の選挙に政党推薦は必ずしもプラスとばかり言えず、政治家個人の動きもまた別物。県議会の圧倒的多数を占める自民党県議の多くは今回も石井支持で動くとみられ、相手候補の動向を見ながら出馬表明の時期を探ることになりそう。

 D ただ、前回知事選後に実施した財政構造改革プランで、補助金をカットされた団体などの不満は想像以上に大きい。これまで石井知事を支持してきたある業界団体幹部は「前回は悩んだ末に推薦したが、(補助金がカットされ)前回より関係が悪化しているのは間違いない」と胸の内を明かす。まあ、自らにとっての利益・不利益に左右されず、こうした厳しい政策を貫くところが知事らしいところではあるのだが…。

 C 「石井VS伊原木」の構図が見えかけたところへ、一井氏出馬のニュースが飛び込んできた。

 D 県議として県内各地を回るうち、時代の変化に県政が追い付いていないことを痛感し、任期を3年余り残しての決断だ。「雇用1万人創出」「人づくり」「地域、現場を大切にする」を政策の柱に、企業・団体・政党に頼らず、1人ひとりに思いを伝え支援の輪を広げていくという。

 B 民主党を離党しての出馬ということだが、選挙への影響はどうか。
 A 地盤の岡山市中区以外では知名度は低く、今のところ未知数だが、出馬会見で「おかやま夢づくりプラン」について「あれもこれもやるのは無理。メリハリを付け、やると決めたことに人もお金も集中して結果を出すべき」と主張していたのが印象に残った。伊原木氏が出馬を決断すれば、現職の批判票を奪い合うことになるのは間違いなさそうだ。

 C 2代にわたり岡山商工会議所会頭を長年務めた伊原木家は県経済界に絶大な影響力を持つだけに、出馬となれば対応に苦慮する企業も多くなりそうだね。

 A 特に天満屋グループは幅広く事業を展開しており、伊原木家の親族と県庁OBが理事会に名を連ねるある団体では、早くも複雑な表情を浮かべていたよ。岡山ではこれまで民間出身者、もちろん女性知事も誕生しておらず、県民の評価に注目したいところだ。

 C 話は変わるが、最近の県政界では「東大卒」と「40代」がやけに目に付く。

 D 衆院では民主党現職の津村啓介(40)=岡山2区、1994年法学部卒=と高井崇志(42)=中国ブロック比例、93年経済学部卒=、自民党新人の山下貴司(46)=岡山2区、88年法学部卒=の3氏。首長では倉敷市長の伊東香織氏(45)=90年法学部卒=、そして伊原木氏=90年工学部卒=。一井氏も中退ではあるが東大法学部で学んだ40代。政治家ではないが、㈱ファジアーノ岡山スポーツクラブ(岡山市)の木村正明社長(43)=93年法学部卒=もいる。衆院岡山2区は「東大卒」「40代」同士がぶつかり、知事選も世代は違うものの東大対決だ。

 A ひと昔前まで、岡山と言えば政財界とも慶應義塾大学出身者が主流を占め、政治家は故・橋本龍太郎元首相のような「慶大卒の2世議員」が多かったが随分変わった。

 B 出馬の経緯にしても、昔は大物官僚らをキーマンが口説くパターンが多かったが、最近は党の公募が増加。そのため若者の出馬が増える傾向にあるが、岡山出身者は減少し、朝日や操山のような地元高校より「東大ブランド」の威力が相対的に増している面もあるのでは。倉敷市の伊東市長の場合、旧3市のライバル意識が強い中で「県外出身者だからこそうまく収まった」と評価する声もある。

 D 企業・団体トップの号令で票が集まる時代ではなく、労組も弱体化する中で「同窓生」というのは政治家にとって頼りになる存在なのは間違いなく、これまでの選挙で大きな役割を果たしたケースも少なくない。ただ、個人情報保護法が壁となり、同窓会名簿の利用にはかなり神経質になっているようで「広がり」という点では限界がある。その分、ブログやツイッターなどによる情報発信に力を入れる陣営が多くなっている。

 C いずれにしても知事選まであと8カ月。今のところ出馬を正式に表明したのは一井氏のみで、国会も先がまったく見通せない状態。今後の動向を注視していこう。

本誌:2012年2.27号 4ページ

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