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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

熊手

 近年、熊手という竹製の生活用具を使う人は多くないと思いますが、田舎暮らしでは落ち葉や刈り取った草を効率的にかき集めるのにとても重宝します。私が子どものころはたいていの町や村には「熊手屋」という家内工業的に熊手を製作販売する工房があったものです。手作りの頑丈な熊手は工芸品としてそれなりに高価な道具だったように思います。

 今では荒物屋の消滅とともに、職人が手間暇かけて作った芸術品のような熊手も一緒に消えてしまいました。現在ホームセンターで売られているものは中国製の雑な商品で安価。二、三度買ったことがありますが、すぐに竹製の櫛歯がへたりボロボロと柄から抜けていくので使い物になりません。

 ところが先日、県北の「道の駅」に立ち寄ったら、思いがけず昔懐かしい伝統的な熊手が売られていました。柄は木製で重量感があり手によくなじみます。ただ櫛歯の数が8本仕立てとちょっと粗いのが気になりましたが迷わず購入。そして車を走らせていたらまた「道の駅」があり、今度は12本歯の熊手がありました。「ここで買えばよかった!」と思っても後の祭。さすがに熊手2丁は要りません。

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本誌:2020年12月7・14日号 18ページ

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