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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

熊手

 近年、熊手という竹製の生活用具を使う人は多くないと思いますが、田舎暮らしでは落ち葉や刈り取った草を効率的にかき集めるのにとても重宝します。私が子どものころはたいていの町や村には「熊手屋」という家内工業的に熊手を製作販売する工房があったものです。手作りの頑丈な熊手は工芸品としてそれなりに高価な道具だったように思います。

 今では荒物屋の消滅とともに、職人が手間暇かけて作った芸術品のような熊手も一緒に消えてしまいました。現在ホームセンターで売られているものは中国製の雑な商品で安価。二、三度買ったことがありますが、すぐに竹製の櫛歯がへたりボロボロと柄から抜けていくので使い物になりません。

 ところが先日、県北の「道の駅」に立ち寄ったら、思いがけず昔懐かしい伝統的な熊手が売られていました。柄は木製で重量感があり手によくなじみます。ただ櫛歯の数が8本仕立てとちょっと粗いのが気になりましたが迷わず購入。そして車を走らせていたらまた「道の駅」があり、今度は12本歯の熊手がありました。「ここで買えばよかった!」と思っても後の祭。さすがに熊手2丁は要りません。

 家に帰りさっそく塀沿いの道路に散乱したツタの落ち葉をかき集めてみました。やはり8本歯は目が粗すぎて取りこぼしが出ます。12本歯のものが欲しかったなあ。トホホ。
それはともかく、竹製の熊手は欧米発祥の金属製熊手(レーキ)とは似て非なる存在で、竹の硬柔兼ね備えた素材の威力には驚かされます。畑で刈り取った草をかき集めるとき、熊手の歯が地を這う丈夫な蔓草や石ころに引っかかることがあります。そんなとき竹素材の歯はしなることにより障害物を回避し、草だけ効率的に集めてくれます。一方、レーキの金属製の歯は蔓草や石に引っかかるとどうにもなりません。障害物を柔軟に回避する能がないのです。

 2020年という年はコロナに始まりコロナに終わりました。硬直したPCR検査、ステイホームとGoToキャンペーンというブレーキとアクセルの併用、国と自治体の意見相違でストップしがちな対策……。新年は日本伝統の工芸品、竹製熊手のしなやかさで、その地方の医療、経済の実状にあった効果的なコロナ対策が取られることを切望します。

本誌:2020年12月7・14日号 18ページ

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