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巻頭特集㈱まつもとコーポレーション社長 北川克弘氏

目指すはコンサル能力持つゼネコン 自ら仕事創出し経営強化 異業種連携で多彩な人材活用

  • 北川克弘氏

 地場総合建設業の㈱まつもとコーポレーション(岡山市北区表町3-14-1、北川克弘社長、資本金8000万円)は、地方の中小事業者では異例なコンサルティング機能を持った存在を目指している。環境保護、防災などニーズの高度化、複雑化で、依頼通り・設計図通り建設を請け負う従来のビジネスモデルでは通用しないと考えているため。依頼内容のその先を見通し、より良い提案をするのはもちろん、街づくりなどの夢を描きそれを積極的に外部へ発信することで埋もれたニーズも掘り起こしていきたいとしている。

 建設業は従来、施主の意向を忠実に形にすることで商売が成り立っていたが、そういった決まったものを形にするだけでは価格競争になりやすく、自らの体力を弱めるばかり。2002年にバブル崩壊の中で民事再生法適用申請にまで至る経営危機の一因となった。コンサルティング機能を持った地域ゼネコンは、その反省から生まれたビジョン。しかし専門性と規制を背景とした保守的な業界の風土に加え、経営再建のために目先の受注を優先せざるを得なかったこともあり、改革はなかなか進まなかった。それが変わったのは2016年の県外から招へいされた北川氏の社長就任。新風を吹き込んだことが契機となり、また北川社長が「何でもやってみる精神」でビジョンを明確化したことで加速していった。

 狙うのはコンサルティング機能を持つことで、企画の初期段階からかかわり、受注のチャンスを拡大すること。さらには、社員それぞれが夢を語り、それを提言として発信することでニーズを呼び起こすこと。そこで必要になれば建設業のセオリーに固執せず、異業種の技術、人材も取り入れ提案力を高める取り組みを進めている。

 社内で提案力を高めていく一方で、断行したのが、外部の発想やスキルを活用すること。その第一歩が、2018年12月の地場広告代理、建設の㈱ティ・シー・シー(TCC、岡山市)との資本業務提携だった。天満屋グループでイベント、店舗プロデュースを手掛ける同社の企画力、プロデュース力を生かすことでコンサルティング能力を強化するもので「企業文化の違いを強みに変えたい」と強調。そのかいあって岡山県立博物館の改修工事をJV(共同企業体)で受注したほか、民間工事でも受注に向け共同提案を進めており徐々に成果が出ているという。

 建設の現場、特に大型工事は提案力がものを言うコンペで決まるケースが多く、大手ゼネコンがしのぎを削っている。近年は公共事業でもプロポーザル(提案)方式が末端の市町村にまで広がりつつあり、提案力と地域に密着した実績さえあれば地場ゼネコンも太刀打ちできるようになると予測。それだけに、成長途上の自社提案力を補うTCCとの提携は大きな武器になると期待。今後もこのような同業者や異業種との提携、連携を積極的に進め、多様化する要請に対応していく方針だ。

 課題は社員の意識改革だ。一足飛びにはいかないが「コンサルティングには人間力が欠かせない」と社長就任後まず手掛けたのが、社員がクリエイティブな発想をできるようになるよう、オフィス環境の改善でモチベーションを高め、社員のアイデアを積極的に汲み上げること。さらに今年から働きながら学ぶリカレント教育を導入。現在社員1人が夜に大学院に通っており、社会の経験知に学問の理論が加わることで理解が深まり社員の自信にもつながるほか、ほかの社員の学習意欲の刺激にもなると期待している。

 また今後の建設業界をけん引する若い人材の採用にも積極的。採用難の中でも今春には大卒6人を採用し、来春採用へ4人を内定している。今や同社の年齢構成は20歳代が3分の1を占めるほど。建設業の枠を越えた新たな発想をしてもらうため他業界からの中途採用も積極的に行っていく考えで「多様な才能を持った集団に変えていきたい」と意気込んでいる。

インタビュー

価格競争から脱却を

―「創造を提案できる企業」とは。

 従来の価格競争ではだめだ。時代の変化を対応し時代の最先端に誘導する提案ができないと生き残りは難しい。そのためには建設業の枠にとどまっていてはだめ。その中で社内に「百年企業の新たなキャンバスに未来図を描け!」とキャッチコピーを掲げている。正直に言って私自身も具体的に何をやればよいのかわからない。模索中だ。デジタル化への取り組みを含めて、とにかくやってみること。そこに何かヒントがある。

―今後どのくらいの企業規模にしたいか。

 かつては売上高約250億円を上げていたが現在は約40億円で従業員数は71人。再び拡大路線に走り質を落としたのでは意味がなく、この規模のままで今後質を高め基礎を固めたい。当社ではデジタル化も含めさまざまな業務改革に賢明に取り組んでいるが、現在の規模がちょうど小回りが利く。また、営業エリアも大都市圏に拡大するのではなく、地元岡山に特化し重点的に開拓していく。ただ、企画提案力の強化に向け社会の最新の情報を得るために東京に拠点は欲しいと思う。

―デジタルへの対応は。

 5Gをはじめとする技術革新でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進めば、建設業界でも、新たな発想・技術が求められる。それに対応するため、まずは自社でIT化を進めている。社内イントラネット、仮想サーバー、3D CADを進化させたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などを再構築しているほか、リモートにも取り組んでいる。将来的にはビッグデータを使った提案も検討している。この分野で業界の最先端を走りたい。

㈱まつもとコーポレーション

事業

 1915年に塩飽大工の流れをくむ松本吉平が創業、今年105周年を迎える老舗。民間建築を主体とした総合建設業で、吉備津神社の修復のほか、デザイン性の高い建築物まで幅広い。90年に㈱松本組から現社名に変更した。2002年に経営に行き詰まり民事再生法適用申請、規模を縮小し事業を継続。05年に民事再生終結。その後16年に外部から北川克弘現社長を招き、現在業務改革を推し進めている。

概要

代表者 北川克弘
所在地 岡山市北区表町3-14-1
資本金 8000万円
創業 1915年3月
設立 1961年3月
拠点 大阪支店、東京事務所、井原営業所、美作営業所
従業員数 71人
売上高 39億5500万円(2019・11期)

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