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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

「得意な感覚」と「苦手な感覚」

 突然ですが、あなたは部下や後輩を指導したり、子供に何かを教えたりする機会はありますか?そんなときに知っておくと便利な、「学び方のクセ」についてお伝えします。

 人はそれぞれ「よく使う得意な感覚」と「あまり使えない苦手な感覚」があることをご存知でしょうか。専門的にはVAK モデルと言われています。VAKとは視覚(Visual)、聴覚(Auditory)、身体感覚(kinesthetic)の頭文字です。私たちは、この3つの感覚を状況に合わせて使い分けています。普段の生活の中で日常的に使っているこの感覚ですが、実は、その感覚の優位性にはとても個性があり、「人によって処理しやすい情報が違う」のです。

 心理学の学びを深めると、カウンセリング技術を学ぶ一環として、目の前の人はどの感覚が優位なのかを見抜き、その人に合わせたコミュニーションスタイルを取る技術を磨いていきます。もしかしたら、「話の通じない困ったやつ」と思っている部下は、実はあなたと優位感覚が異なっているだけなのかもしれません。今回は私たちがどのようなことを手掛かりに、相手の優位感覚を紐解いていっているのかというポイントと、コミュニケーションのポイントをお伝えしたいと思います。

 手掛かりとなるのは、3つのポイントです。「思考している時の目線」と「言葉の選び方」そして「話す時の手の動き」です。まず、もっとも観察しやすいのは「思考中の目の動き」です。視覚優位の人は、考えるときに上を見て思考を深めようとする傾向があります。聴覚優位の人は、目線が左右に動く傾向が。そして身体感覚優位の人は、下を向きながら思考する傾向が見られます。

 次に手掛かりとなるのは、言葉の選び方です。面白いほどにこの感覚優位が現れるのは道案内です。視覚優位の人は光景を描写する人が多く見受けられます。交差点の右側に赤い看板があって、とか、白い大きなビルが、などの表現が多用されます。聴覚優位の人は「500mほど歩くと」や「3分ほど歩いたところに」といった具体的な情報で提供しようとする傾向が見られます。

 面白いのが身体感覚優位の人。擬音が多くビャーッと行くと、くるっと回ると、などの表現が使用されます。そのとき手の動きもやたらと多く、手の動きをやめなさいと言われたらしゃべることができなくなってしまうほどです。逆に聴覚優位の人はほとんど動かしません。手を動かさなくても頭の中で言葉を組み立てていけるからです。視覚優位の人も手を動かしますが、身体感覚優位の人のようにやたらと動かすというよりは、イメージしているものを表現するために動かします。

 もしも、教えたい相手が視覚優位の人であるならば、言葉で説明するよりも図解して見せたりする方が理解しやすいです。メモをしっかり取る時間を与えてあげないと、後から思い出すことが難しく、理解できなくなってしまうことがあります。

 聴覚優位の人は、言葉での説明や指示を理解しやすいタイプです。メモをあまりとらないタイプでもあります。先生の説明の間黒板をじっと見つめ「これは大事だ」と思ったことだけを要点にまとめてメモできるタイプです。聴覚優位の人に対して、メモを取りながら聞け!と指摘すると逆に理解を妨げることがあります。

 身体感覚優位の人に対しての指導を、異なるタイプの指導者が受け持つ場合、困難を感じるかもしれません。言葉で細かく説明するよりもやってみて、体験しながら感覚をつかんでいくのが得意なタイプなのです。先ほど、言葉の選び方のところで、擬音が多いとお伝えしましたが、身体感覚優位を説明するのによく事例に出されるのが元読売巨人軍の長嶋監督です。身振り手振りを交えながら「ボールをジーっと見続けて」「ビュンと来たら腰をグッと落として」「バーンと打つ」などの説明はまさに身体感覚優位の人ならではです。実際このように説明されて体を触ってもらいながらタイミングを体得する方が分かりやすいという方もいるのではないでしょうか。

 とはいえ、あの人はこのタイプと安易に限定してしまうことも危険です。あくまで、ヒントとして活用して欲しいと思います。あなたの得意な感覚は何だと分析されますか?そして身近な人の得意な感覚は何だと予想されますか?違いに想いをはせることがコミュニケーションの大事な土台。ぜひこの感覚優位もその一つとして取り入れてみてください。

本誌:2020年9月14日号 15ページ

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