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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

中田敦彦の「伝える力」

 お笑い芸人、政治家と、言葉で伝えて人を動かすことの頂点にいる方々について、先々月からお伝えしております。今月はある一人の方に焦点を当てて、ご紹介したいと思います。

 「伝える力」が素晴らしい方々に注目をして、研究をしている私ですが、その中でも特に注目している方がいます。お笑い芸人であり、アーティストであり、作家であり、そして今やトップユーチューバーの仲間入りを果たした方です。その方の名前は中田敦彦さん。2019年春にYouTubeに動画投稿を始め、勉強系ユーチューバーという新しいジャンルを開拓し、最速でチャンネル登録者100万人を突破したこの方。「中田敦彦のYouTube大学」の動画はご覧になったことがある方もいるかもしれません。

 実は、以前から中田敦彦さんのプレゼン力に注目しオンラインサロンのメンバーにもなっていた私。先日、東京出張にからめてこのYouTube動画の撮影に立ち会ってまいりました。ノンストップで一人喋り。2時間越えの収録に立ち会わせていただきました。感動の中でもしっかり分析した「中田敦彦さんがやっている、わたしたち一般人でも真似できるポイント」をお伝えしたいと思います。

 最も特徴的なのは、オープニングです。これから話す内容がどれほど興味深いのか、私たちの生活に結びついているのか、これを知っておいたほうがいい理由などをしっかり述べられてから本編に入ります。ゴルフをなさる方であれば「ティーアップ」という言葉はご存知のことでしょう。話をする上でもこのティーアップは欠かせません。これからする話は価値があるよ、しかもあなたと関係があるよ、としっかり期待値を上げてから話し始めます。

 ところが、これとは逆のことをやってしまう人がとても多いのです。「うまく伝わるか分かりませんが…」とか「少し難しい話になってしまうのですが…」など、話を聞く前から、難しい話なんだ、分かりにくいんだ、と相手に先入観を持たせてしまってから話し始めることです。これをディスカウントと言います。自分がこれから伝えることを値引きしてから伝え始めるのです。最も良くないのは「準備不足で」や「私は話すのが下手で」と切り出すこと。準備不足なら準備してこいよという話ですし、話すのが下手なら練習してこいよという話になってしまいます。

 中田敦彦さんのプレゼン力に注目するきっかけになったのは、「しくじり先生」という番組でした。名著を分かりやすく解説していたのを偶然見たのです。その番組では中田敦彦さんはわざとゆっくりと登壇して「わたしが…来ました!」とたっぷりと間をとってポーズを決めて見せることから話し始めました。なにもこんなティーアップをしようとオススメしているわけではありません。「私が喋るんだから、面白い話ですよ。さあ聞きたまえ」こんなオープニングはキャラクターを立てた芸人としての中田敦彦さんの言葉でしょう。しかし、同じ中田敦彦さんもYouTubeの中では「私がすごい」とは言いません。今から伝える話は興味深く、私たちの生活に直結している、だからこれを知らないと損している、と「今から話す内容」をティーアップするのです。皆さんは伝える力に自信がないかもしれません。引きつけながら上手に話すことはできないかもしれません。そんな自分の自信のなさがディスカウントの言葉につながるのです。だから難しいっていったでしょ。だから分かりにくいっていったでしょ。と保険をかけたくなってしまうその気持ちは分かります。

 しかし、たとえ自分の伝える力が誇れるものではなかったとしても「今から話す内容はとても重要で、皆さんの暮らしに大きなつながりがあり、これを知っていると知っていないのとでは差が出てくる。だから一生懸命伝えさせていただきます」と、自分ではなくこれから伝えることをティーアップすることはできるはずなのです。自分ではく、伝える内容をティーアップするオープニングを!ぜひ心の隅に留めておいてくださいね。

本誌:2019年10月14日号 21ページ

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