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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

コンニャクの花

 今は亡き父が昭和40年ごろ小学校の校長として赴任していた北房町(現真庭市)から持ち帰ったコンニャクが、主を失った今でも実家の庭で元気に育っています。4月中旬ごろ太い葉茎が1本まっすぐ地上に出てきて葉を広げ晩秋には枯れます。農家はそのころ芋を掘り食品としてのコンニャクに加工するのですが、我が家では父も私ももっぱら観葉植物として毎年楽しんできた次第です。

 ところが今年はいつもの太い葉茎が何か変です。どうしたのかと思って観察していたら、びっくり仰天、花茎が伸びてきたのです。コンニャク栽培農家では大して珍しい現象ではないと思いますが、私の身近にいる人々に尋ねてもコンニャクの花の実物を見たという人は皆無です。

 コンニャクはミズバショウやカラーとおなじくサトイモ科の植物であり独特の形状の仏縁苞があります。花全体の大きさは地上から計ると2mぐらいあり、色はカラーチャートを参照してみると葡萄色(えびいろ)が近いかなと思いますが、黒っぽい紫でビロードのような質感です。ちょうど新皇后陛下がときおりお召しになるドレスの色によく似たシックな色彩であり、父が植えて以来50数年間一度も花を咲かせたことがないのに、新元号が始まるとともに前代未聞の花を咲かせたのは植物までもが令和時代の始まりを祝福しているかのようです。

 私はこの巨大でユニークな花を人目につかない庭の中で独り占めするのはもったいない、多くの人にコンニャクの花を紹介したいと思い、思い切って地元新聞社に取材を持ちかけてみました。すると早々に取材に来てくれ、3本の大きなコンニャクの花に囲まれた私の写真をカメラに収めて帰られました。新聞に掲載されるかどうか分かりませんが、期待に胸膨らみます。

 実は父も昔、近所のため池に繁茂する巨大なオニバスを同じ新聞社に紹介し、取材してもらってオニバスの写真とともに紙面に登場したことがあります。父と息子はえてして何かにつけ対立するものですが、長い人生では似たり寄ったりの行動をするものです。父がなくなって間もなく5年。息子の私にこんな大きなサプライズを残してくれていました。父の命日には墓参りをし、父が見ることがなかったコンニャクの開花をお墓に報告しようと思います。

本誌:2019年5月20日号 26ページ

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