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企業・事業紹介㈱松崎牧場

3世代で攻めの酪農目指す

  • 親子3世代で経営。左から松崎光紀氏、範之氏、隆氏

 ㈱日本政策金融公庫は、農林水産、国民生活、中小企業の3事業の総合力を発揮し事業承継の支援に取り組んでいる。団塊世代の経営者が引退の時期に差し掛かり経営のバトンのスムーズな受け渡しが重要な課題で、その成否が今後の地域経済に大きな影響を与えかねないからだ。第1弾は農林水産事業の取引先の「㈱松崎牧場」の事例を紹介する。

 同社は西大寺の西側、岡山市東区松新町で牧場を経営。飼養頭数は約110頭。そのうち搾乳牛は65頭。牛は外部から購入せずすべて自家育成だ。近隣に水田(約13.6ha)を持ち、水稲の裏作で牛の餌となる牧草を栽培している。牛の糞尿のたい肥は自社の水田で使うほか、近所の果樹農家に販売。6次産業化でジェラート店も経営している。

 現社長の松崎隆氏が事業基盤を築き、現在は息子で取締役の範之氏を中心に経営。昨年4月には孫の光紀氏が入社し、3世代で切り盛りしている。全国的に後継者難による酪農家の廃業が相次ぐ中で、同社は後継者に恵まれた。範之氏は中学3年生の時に「両親が楽しそうに働いている姿を見て酪農が魅力的に思えた」として後を継ぐことを決意した。範之氏の経営参画後、隆氏は信頼して任せ、口出ししなかった。範之氏は期待に応え、生乳の品質を徹底的に追求し事業を発展させた。2005年日本ホルスタイン登録協会のジャッジマンに認定されたほか、10年10月には隆氏夫妻が最も栄誉ある農林水産祭天皇杯を受賞した。

 光紀氏は岡山市内の普通科高校に進学。その後ばく然と酪農関連の道へ進もうと酪農大学校へ入学した。それでも当初は将来への不安があり後を継ぐ明確な意思はなかった。しかし、熱心な講師や家業を継いだり新規就農しようと真剣に学んでいる同級生の酪農への夢、意欲に感化され、自身も後を継ぐ決心をした。

 このように後継者に恵まれた同社でも、事業承継に向けた手を打つ必要があった。経営は現在順調に推移しているが、乳価は低迷を続け、さらにTPP(環太平洋パートナーシップ)が締結されれば海外から安価な乳製品が大量に入ってくることが懸念されるなど、酪農家を取り巻く環境は厳しさを増しているからだ。そうした厳しい環境の中で、範之氏、光紀氏が引き継ぎしっかりと経営していくことができるように事業基盤の整備に取り組んだ。

 将来に向け経営規模の拡大が必要と判断し、4月に新牛舎を建設し搾乳ロボットを導入した。国の補助金や公庫の融資を活用し社運を懸けた大規模な設備投資だった。最新鋭のロボットで搾乳能力は従来の2倍になり、作業時間が大幅に短縮。現在新牛舎には34頭いるが、60頭にまで増やす方針。また、高齢化が進む近隣農家から水田の管理を依頼されるケースが増えおり、余力で水田の面積を広げ稲作、牧草づくりも拡充する。そのほか、ジェラートは国内だけでなく海外へも販路を拡大していく。

 また、事業承継に向け将来組織運営しやすいよう、2016年10月には個人経営から株式会社組織にした。行政の補助金を活用しやすい面や財務諸表の整備などで資金の流れが明確になり経営の効率化にもつながる。農地など資産の相続も円滑に進むと期待してのことだ。

 公庫とは古い付き合いで、事業承継についても相談。隆氏は「牛舎建設などを含め幅広く親身に相談にのってもらい心強かった」と振り返る。公庫をはじめ金融機関からみても、後継者の存在は信用力の向上につながる。酪農の将来は決して楽観視できないが、親子3世代の挑戦は続く。

㈱松崎牧場
所在地 岡山市東区松新町334
代表者 松崎隆
創業 1959年
設立 2016年10月
資本金 500万円
従業員数 8人
事業内容 酪農(飼養頭数約110頭)、水田(約13.6ha)、ジェラート店運営

本誌:2018年11月5日号 14ページ

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