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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

1泊2日の松江旅行(後編)

 松江のお城から駅まで町並みを楽しみながら歩いていたら、昔家族で泊まった旅館が偶然見つかりました。今では「サンラポーむらくも」という立派なホテルになっていました。若かりしころの父母と旅したことが夢の中の出来事のように懐かしく思い出されました。

 さて話を現代に戻してみると美しく発展した松江の都市景観には訪れる度に感嘆させられます。宍道湖のほとりに立つ島根県立美術館は私の大のお気に入りのスポット。湖面の広がりに調和するおおらかな建築物は松江の風景と解け合い、用がなくても立ち寄るべき観光ポイントです。

 今回2階の展示室入り口の巨大空間にオーギュスト・ロダン作「ヴィクトル・ユゴーのモニュメント」像があることに初めて気が付きました。どういう経緯でユゴーの彫像がこの美術館のメーンホールを飾ることになったのか寡聞にして知りませんが、開館準備をした美術館関係者の趣味の良さ、知性を大切にしようとする熱意、そんなものが伝わってきます。

 訪問したときは、企画展として「エヴァンゲリオン展」(7月9日まで)が開催中でしたが、私はコレクション展を見ることに許された時間のすべてを使いました。なかでも歌川広重の東海道五十三次の版画は驚きの連続でした。美術全集などに掲載されている印刷の浮世絵図版と実物の浮世絵の生き生きとした仕上がりがこうも違うとは! 江戸時代の日本美術が西洋に与えた影響力の大きさは当然で、ある意味現代版画も江戸時代の水準は決して凌駕できないのではないかとさえ感じました。

 ほかにも少数ながら珠玉のような西洋絵画のコレクションが展示され、クールベ、コロー、シャヴァンヌ、シスレーなどにいつでも触れることができるのがうれしいです。地元の作家や画家の作品を収蔵・展示するとともに内外の超一流の作品を展示することもこうした地方の美術館の責務だと思いますが、ここでは幅広い世代の人に訴えるようバランスのいい展示が常に意識されているように感じます。

 最後にこの美術館のもう一つの楽しみは併設のレストラン。本格的なランチを堪能しながら窓の外に広がる宍道湖と松江の町並みを眺めるのは最高のごちそう。レマン湖に浮かぶジュネーブの町並みにも引けを取らないうっとりするながめです。

本誌:2018年5月21日号 19ページ

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