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高すぎる目標は勇気をくじく

 先日、経営者の会で「リーダーのためのアドラー心理学・勇気づけのコミュニケーション」と題して講演をさせていただく機会に恵まれました。広いホテルに設けられた会場を見渡せば、所属している経済団体の会長や理事職などの重職につかれている先輩ばかり。人前でお話をすることに慣れている私でも、流石に緊張しました。

 アドラー心理学を知っていますか?本などを読まれたことありますか?という私の問い掛けに手が上がったのは、10%にも満たないようでした。経営者として勉強熱心な皆さまでも、まだまだ知られていない存在なのだな、と実感すると同時に私がお伝えするといお話がアドラー心理学との出会いになるとは、光栄かつ大きなプレッシャーでもありました。

 約1時間のお時間を頂戴して講演の後、懇親会では皆さんとテーブルを囲ませていただきました。多くの方に声を掛けていただき、感想やご意見をいただきましたが、多くの方がある一節について話し掛けてくださったのです。よく分かりました!という方もいれば、どうも引っかかってしまっていると、その両方の声があったのです。その一節は「高すぎる目標は勇気をくじく」という点でした。

 普段、自分を甘やかかすことなく、高い目標を立て前進していらっしゃる岡山を代表する経営者の方にとって「目標が高い」ということは、普段から心掛けていることで、「勇気くじきにつながるとは?」という視点だったようです。もちろん、高い目標をおくことも大切です。生産性を120%上げよう!という目標であれば、手順を一つ簡略化するとか、2人で60分かけていた作業を3人でより早くできるように工夫しようといった改善になります。しかし、生産性を200%上げよう!という目標を立てたなら少々の改善では実現不可能です。そこには、リノベーションが生まれます。新たな発想がなければ不可能なのです。

 私も、セミナーなどでワークをしてもらう時、5つくらいは項目を埋めてほしいなと思ったら、最初から「5個くらいは書いてくださいね」とは言いません。その伝え方だと、3つくらいしか埋まらない方が出てきてしまうからです。「10個くらいを目標に書いてみてください」と伝え、設けた制限時間終了の少し前に「いかかですか?10個が目標でしたが、少なくとも5個は頑張って思い浮かべて見てください」と伝えると大体の皆さんが5個くらいは書けるようになります。視点を上げるから、高い成果につながる。それはもっともなのです。

 しかし、経営者・リーダーの方に伝えたのは「高すぎる目標は勇気をくじく」ということでした。高い目標に向かって挑戦するためには、エネルギーが必要です。ガス欠の状態では頑張れないのです。前提として心のガソリンを満たす、勇気づけの関わりが必要なのです。そして、高い目標を据えて、この成果がどうしても必要だからとにかく頑張れとやみくもに激励するのではなく、「困難を分割する」という視点を持ってほしいのです。一挙に高い目標に挑むのではなく、目標を細分化しながら、まずは当面の目標をクリアするように支援し、勇気づけの関わりをしながら、次のステップに挑戦して行く過程をリーダーが作ってゆくのです。

 そして、私のアドラー心理学の師 岩井俊憲はこう言います。「目標はグタイテキであれ」と。
グ 具体的に ― しっかりやれとかちゃんと出せではなく、曖昧言葉は伝わらないと認識しておく
タ 達成可能な ― 雲の上のように感じるものではなく、頑張れば手が届くと感じるもの
イ 意欲的に取り組めるもの ― 何ために?という答えが見えるもの
テ 定量的 ― 数値化できること
キ 期限付き ― 負荷がかかるとすればここまで、と未来が見えること
そしてリーダーは「目標」と同時に「目的」もメンバーに伝えてほしいのです。目標とは?目的とは?皆さんはどのように解説されるでしょうか?

 これをダイエットに例えると分かりやすいのですが「5キロ痩せる」は目標です。目的は「クリスマスパーティーであのドレスを着る」とか「健康診断の数値をここまで下げる」と言ったものです。目標だけだと、人のモチベーションは持続しません。目標の先にある目的を示すリーダーであってほしいと願います。

本誌:2017年12.4号 19ページ

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