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ワケギのぬた

 ワケギの酢味噌和えなど今どきの子どもたちは喜んで食べるのでしょうか。若い世代の家庭の食卓ではめったにお目にかかることはないでしょうし、むしろ料理屋の突き出しくらいでしか人の目に触れない一品だと想像します。

 ワケギはお隣の広島県・尾道市が有名な産地ですが、どこでもよく育つ家庭菜園向きの野菜です。9月ごろ球根を植えるとすぐ芽を出して生育を始め、2カ月ぐらいで食べられる大きさになり、ネギの代用にもなります。そのまま冬を越させ早春2月ごろ再び生育を始めたものを畑から株ごと引き抜いてきて料理します。

 私は子どものころ、母が作ってくれるワケギのぬたが大好きでした。畑から取ってきたワケギを“しょうやく”(下準備)して、1分ほど熱湯に浸けたらすぐ冷水に取り、水気を切って酢味噌で和えます。主役はワケギですが、そこに季節の魚介類を合わせることによって食味のバリエーションを楽しみます。

 岡山ではばら寿司でも必須の食材であるモガイを甘辛く煮たものをワケギのぬたにもよく加えます。ちなみに現在ではモガイと言っていますが、正確に言えば昔は「ハイガイ」と呼んでいました。どうやらモガイとハイガイは別種の貝のようです。ハイガイを正調岡山方言で発音すると「ヘーゲー」となります。

 たまに食べるとしみじみおいしいワケギですが、困ったことに収穫の期間が1カ月間くらいしかありません。かといってぬたばかり毎日食べることもできないので、今年は旬の今の時期に大量にぬたを作って冷凍保存することにしました。

 モガイ、マテガイ、マグロの赤身、シラス、油揚げなどと組み合わせたものを200gずつ冷凍パックに詰めて冷凍室へ。そうでなくても狭い冷凍室が20袋ものワケギのぬたでいっぱいになりました。

 しかしながら、これらの冷凍保存されたぬたを実際に他の季節に食べることになるかどうか自分でも怪しい予感がします。ほかの多くの自家製保存食同様、冷蔵庫の肥やしになりそのうち冷凍庫の食材は氷河に閉じこめられたミイラと化す恐れ大です。

 そもそもぬたを冷凍庫に入れるためにミイラたちを一掃したのですが、3年前の食材などもありました。そうならないように冷凍ぬたは早いうちに頑張って食べようと思います。

本誌:2017年4.10号 14ページ

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