WEB VISION OKAYAMA

連載記事

アドラー心理学は「目的論」の心理学

 アドラー心理学に基づくコミュニケーションや人材育成の研修を担当しておりますと、勇気づけ以前にまずは勇気をくじかないことを大切にしてほしいと痛感しています。勇気くじきとは、「困難を克服する活力を奪うこと」です。

 代表的なものは①高すぎるハードル設定②達成できていない部分の指摘③人格否定。特に高い目標を据えることには弊害があると感じます。アルフレッド・アドラーの言葉に『高すぎる目標は勇気をくじく』というものがあります。部下にどんな仕事を任せるか、それを決めるのも上司の重要な役割です。大きな仕事を任せられないと思っても、部下からすれば「どうしてやらせてくれないのか?」と不満を持つこともあるでしょう。また能力があると上司が判断しても「本当にできるんだろうか?」と不安がって動けなくなってしまう場合もあると思います。

 仕事をするうえである程度の負荷を部下にかけることがあっても構いません。その人の能力の範囲で任せていても成長にはつながらないからです。だからと言って能力以上のことをやらせても問題があります。「高すぎる目標は勇気をくじく」とは、部下を鼓舞しようと倍の目標を与えるようなことを言います。「倍の目標を設定してそれに向けて頑張れば、仮に失敗しても従来の2~3割増しになっているはず」。そういう考えで社員に過大な負荷をかけてしまう会社は決して少なくありません。

 しかし、高すぎる目標に過度なプレッシャーを感じてしまうと、結果として部下は勇気をくじかれ現状維持も難しくなってしまいます。目標を掲げることは大事ですし、やる気の源になる程度の負荷をかけるのも良いことですが、「ほどほどのギャップ」がやる気の源泉になることを忘れてはいけないのです。

 ここで目的と目標について改めて考えてみたいと思います。目標とは?目的とは?どう違うのでしょうか?皆さんなりに考えてみてください。アドラー心理学は「目的論」の心理学といわれます。目的とはビジョンやミッションと言えるもの。目標とはゴールと言えるものとアドラー心理学では捉えています。目標を据えるときには、その先の目的をしっかりと伝える事を上司は心に止めておいてください。そして、その目的に向かうステップとして、目標を段階を踏んで示してあげる事が勇気づけに繋がります。目標はスモールステップであることをぜひ心掛けてみてください。

 そのために達成できていないところ、努力が足りないところに注目する「ダメだし」のコミュニケーションではなく、できている目標に達しているところはもちろん、目標に近づいているところ努力していると思われるところに注目する「ヨイ出し」のかかわりを心掛けてみてください。

 私たちはつい、なんでやらなかったの?どうしてこんなことになったの?とWHYを向けてしまいがちです。WHYの問いかけは、過去思考の原因論的になりがちです。WHYを人間の行動に対して3回続けて投げかけると、50%のウソが混じるとの研究結果があるそうです。なぜ?どうして?を人間の行動に向けるときには注意が必要です。人格を否定されたように感じ、自己保身に走りたくなるのでウソが混じってくるのでしょう。ぜひ、どのようにすれば?という目的論で対応してみてください。そのうえでミスをさせないようにすることも大事です。「ミスをしないという目的のために何をするか」という目的論で考えます。

 間違いの原因は3つに分類されます。①間違いが不適切な行動であることを知らない②間違いが不適切な行動であることを知っているが、どうすれば適切な行動ができるかを知らない③間違いが不適切な行動であることを知っており、適切な行動をしても望む結果が得られないと信じている。

 ダメ出しをして叱る前に①や②の場合には不適切であることを教えたり、適切な行動へ導くことも必要です。③の人は勇気がくじかれた人と言えるかもしれません。間違いを正すだけではなく、間違いを犯す人の心理にもアプローチできるといいですね。

本誌:2016年10.17号 23ページ

PAGETOP