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不気味な殺人事件とその背景

 神奈川県で立て続けに背筋が寒くなるような殺人事件が発生しています。川崎の老人ホームでお年寄り3人がベランダから地面に投げ落とされた殺人事件(2015年11月)を皮切りに、本年7月末には相模原市で障害者施設の元職員だった男が深夜施設に忍び込み無抵抗の入所者を刃物で次々と虐殺していくという戦後最悪の凶悪事件が発生しました。

 その動揺が収まらないうちに今度は多くの老人を預かる横浜の病院で多数の患者が異物を点滴されて殺害されるという信じがたい事件が起きました。この病院では夏だけで50人もの患者が亡くなっていて一連の事件がどこまで拡大するのか本当に不気味な展開をたどっています。

 これら3つの事件に共通していることは、いずれも無抵抗の老人や障害者が犯罪の標的にされていることです。犯人の動機は様々かもしれませんが、共通した根っことして“社会にとって役に立たない存在は抹殺すべし”という恐ろしく傲慢で思い上がった思想があるように思われます。実際に相模原事件の犯人は、ヒトラーにでもなったつもりなのか、英雄気取りで自分の行為をツイッターにリアルタイムで書き記していたといいます。

 さらに恐ろしいことには、こうしたある種、確信犯の動機に賛同するかのような意見をネットに書き込む輩が多数いることです。元東京都知事の石原慎太郎も知事に就任してまもなく障害者施設を訪問した際に、「ああいう人ってのは人格があるのかね」、「ああいう問題って安楽死なんかにつながるんじゃないかという気がする」などと発言したとか。

 こうした“優生思想”は急に出てきたのではなく昔からありました。ライ病に対する人権無視政策はライ病の特効薬ができて感染の恐れがほぼゼロの状態になってからも何十年も続けられました。いわば社会の制度として優生学が君臨してきたところに前述の勘違い犯人達を超えた恐ろしさがあります。今回の猟奇的な事件の表面を見るだけではなく、我々は社会制度のなかに優生学のようなものが忍び込むことを常に警戒しなければ、と思います。

 不況が長引き世の中がすさんでくると勘違い不満分子の怒りはより貧しい人、弱者、病人、老人に向かいます。非常にまずい時代に突入していることは疑いようがありません。

本誌:2016年10.10号 15ページ

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