WEB VISION OKAYAMA

連載記事マネーの道しるべ 18

地獄の一番熱い所

  • 森康彰氏

 選挙が終わって改憲可能な要件が整ったにもかかわらず、随分と社会は静かだなと気味悪く思っていた時、ダンテの言葉に出会いました。ダンテは「新曲」(地獄篇)の中で、こう述べています。「地獄の一番熱い所は、道徳的危機に臨んで中立を標榜する輩の落ちる所である」と。何世紀にも渡って人々を魅了してきた詩人だけあって、本質を突く言葉を投げかけてきます。ダンテの判断軸だと、今回投票に行かなかった人は地獄の業火に焼かれていますね。

 かつて「赤狩り」を体験した世代は、公に政治について語ることに抵抗があるのかもしれません。また、学生紛争などを政治活動とした世代は、挫折感から政治を口にしないのかもしれない。今回、投票権を得た世代はどうなのでしょう。随分と国民が政治について話し合うことがなくなって久しいため、シールズといった同世代の活動を新鮮に感じながらも彼らの倫理観は受け止めることが難しかったのではないかと思います。

 イギリスがEUからの離脱を国民投票で決めました。僕たちはこのことから何を学べばよいのでしょうか。一番は、国民一人ひとりが愚かな選択をしないため、日々努力が必要であること。ポピュリズムの選挙の流れを断ち切ることではないでしょうか。そのためには、政治について経済について国際関係について個人個人が学びを深めていくと並行して議論を続けることが大切です。

 改憲は道徳的な危機ではありませんが、世界に日本人としての道徳や倫理、知性、文化などを示すことになります。しっかりと議論できる土壌をつくっていかなければならない。少なくとも地獄の業火に焼かれている中立を気取り、ポピュリズムに流される集団から延焼し、全体が焼け焦げてしまうようなことだけは避けなければならない。

●森康彰● 2年間、保険代理店に勤めた後、2008年に保険コンサル会社㈲e.K.コンサルタントを設立。2014年に東京支社を設けるなど、首都圏へも業務を拡大中。 敬愛する人物は、稲森和夫、立川談志。

本誌:2016年8.29号 13ページ

PAGETOP