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四国の酷道、今昔

 連休が終わって山々の緑がいよいよ濃くなってくるとたまらなく自然の中に入っていきたくなります。20代30代のころはよく和歌山や四国の山中へオートバイで出かけたものです。ところが当時の国道は“酷道”としか言いようのない狭くて未整備、危険極まりない道路が大半でした。

 垂直に切り立った崖の中程をくり抜くように作られた道路を通行するのは文字通り命がけ、頭上からは落石が襲ってくるし、ちょっとでも油断すれば千尋の谷にバイクごと転落です。しかも信じられないことに見通しのきかないカーブから突然大型ダンプやバスがいきなり道幅いっぱいに迫ってきます。

 しかしそうした酷道は随所でトンネルや橋梁、バイパスの建設が進行していました。当時、そんな工事を横目に見ながら「全線が整備されるのにはいったい何十年かかるのだろう?そんな日は永久に来ないのでは?」とさえ思われたものです。

 ところがです。先週、ちょっと時間ができたので何十年ぶりかでそんな酷道のひとつ高知と徳島を最短距離で結ぶ国道195号線をドライブしてみました。高知市を出発してしばらくたったころ道路沿いに「やなせたかし記念館アンパンマンミュージアム」(香美市)がありました。日本だけでなく世界の子どもたちにも大人気のアンパンマンの故郷がこんなところにあったとは驚きでした。

 そこを過ぎたあたりから国道195号は山に入っていきますが、酷道となるはずがいつまでも立派な道路でした。数年前ついに全線が整備されたのです。人間の営みはすごいものです。気の遠くなるような建設工事も30年、40年継続すれば完成にこぎつけることに感動しました。

 国道195号線のハイライトは高知・徳島県境にある四つ足トンネルです。心霊スポットとして有名ですが道路が整備された今日では心霊現象も現れにくいのではないでしょうか。それでも興味本位の夜間ドライブはためらわれますね。峠のトンネルを無事通過したら後は徳島の市街地まで快適な下り坂ドライブです。

 四国ではいたるところお遍路さんに会いますが、お遍路さんには昔の酷道がよく似合います。車が高速で行き交う道路のそばを歩く姿を見ると、立派な国道は自然の中を無心に歩くお遍路さんにとっては皮肉にも新たな酷道のように思えました。

本誌:2016年6.6号 18ページ

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