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アドラー的な考え方を仕事に生かす

 前回の掲載でアドラー心理学のベースとなるエッセンスをお伝えしました。アドラー心理学では「全ての悩みは人間関係の悩みである」と言い切っています。ビジネスの上でもプライベートでも、生き生きと充実した日々を過ごすためには、快適な人間関係が不可欠であることは共感していただけるでしょう。今号ではアドラー的な考え方を仕事に生かす、実例のパターンをいくつかご紹介しましょう。

 ◆渉外交渉の場で、つい相手の都合ばかり受け入れてしまい、後で後悔する事になる。

 アドラー心理学が日本に広まったきっかけとなったベストセラーのタイトルは、ずばり「嫌われる勇気」ですが、あなたがNOと言えない理由はまさに勇気の欠如ではないでしょうか。

 まず、「NOと言ったら嫌われる」という苦手意識は払拭してください。そして自分の中で何がOKで何がNOなのかを明確にしましょう。自分が数時間残業するだけですむことなら多少の無理も引き受ける、自分だけではなく部署のメンバーにも無理が及ぶことなら正直に状況を伝えることにする、など自分の中でここまでは受け入れる、ここから先は受け入れがたい、と線引きがしっかりできていることが大切です。相手に「NO」と伝える時、まずは要望をいったん受け止めた後、「なぜNOなのか」を明確に説明すれば、建設的な話し合いができます。

 自分の選択として引き受けておいて、あの人が無理を押し付けたと恨みに思うのはお門違いと言うものです。嫌われる勇気を持って正直に自分の状況を伝えることが、逆に相手との心理的距離が近づくこともあるものです。

 ◆頑張っているつもりなのに、上司に認められず、「お前はやる気がないんだよ!」と怒鳴られる

 アドラー心理学の重要な考え方に「課題の分離」というものがあります。先ほどの嫌われる勇気を解説すると「できれば嫌われたくない」と思うのは私の課題、でも「嫌いと思うかどうか」は相手の課題です。嫌われたくはないけれど、相手が私のことをどう思うかは相手の課題なので、その中まで踏み込むことはできない。こんなふうに課題を分離することが「嫌われる勇気」と言えます。

 私は頑張っている、しかし、上司からはやる気がなく見えている、というのが設問の状況です。やる気がないように見えるのは上司の主観。その主観や言い方に振り回されないで、聞き流すのも選択肢のひとつですが、「私自身は頑張っているつもりなのですが、やる気がないと見られているようで、申し訳ございません。私のどんなところがやる気がなく見えているのか教えていただけませんでしょうか?」と率直に聞くことができたらさらにアドラー流です。

 その際、気を付けなくてはいけないのは、感情を乗せて伝えないことです。「分かってもらえていないことが不満です!」という感情が、語気や表情、態度に現れてしまっていると、率直に伝えたことが逆に火種になってしまいかねません。感情「で」伝えることと、感情「を」伝えることは全く違います。分かってもらえていないことが、寂しい、悲しい、悔しい。その感情「を」率直に、感情的にならずに伝えることがアドラー流です。

 「私としては頑張っているつもりなのですが、そうは見えていなかったのだとしたら、悔しいです。どのようなところがやる気無く見えていたのか、教えていただけませんでしょうか?」感情的にならず、率直に伝えることができ、率直に受け止めることができれば理想ですね。どういう行動を「頑張っている」と捉えるかは人によって違って当然です。1つの物事に対しての、見方や捉え方は人によって違うのです。そもそもコミュニケーションにはギャップが生まれるのだと思っておくことが出発点になります。

 「違いを違いとして受け止めること」「一致点は何か、合意点は何かを相手と一緒に探すこと」に気を掛けると、「違う」はずの相手との感覚的な溝が埋まりやすくなります。

本誌:2015年10.12号 19ページ

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