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論文の書き方

 台風一過の秋の日の夕暮れにめったに便りをくれない友人から電話がありました。「京都の女子大に行っている娘がゼミの論文の執筆で困っている。アドバイスしてやってほしい」という依頼でした。

 この夏カナダの従姉妹たちが日本に来たとき、友人とその娘さんを従姉妹たちに紹介しました。以前友人から彼女が国際関係の勉強をしていると聞いていたからです。彼女は高校時代に海外留学したこともあるさっそうとした知的な雰囲気を漂わせた美人。

 そんな彼女の相談とは、「訪日観光客のためのQ&Aを外国語で提供するビジネスモデル」という内容のゼミ論文を、自分がリーダーとなって何人かのグループで構想しているけれど行き詰まっている、でした。

 タイトルを聞いただけで頭の中に暗雲が立ちこめてきました。日本での旅行や生活を計画している外国人のためのお助けサイトはすでに掃いて捨てるほどあるのですが、どうも彼女たちは現状分析もしていないもよう。収益を確保する構造と手段が検討されていない……。いやいや途方もない世間知らずなお嬢さんがたの夢想と切り捨ててしまっては、せっかく私にアドバイスを求めた友人の顔を潰すことになります。

 そもそも日本の教育の大きな欠陥のひとつに、小学校から大学まで論文の書き方についてまったく教育しないことがあります。教師自身が論文の書き方について専門的な訓練を受けていないので教えようがない悪しき伝統が明治以来続いています。

 小保方さんのSTAP細胞事件のそもそもの発端は何も彼女の特異な個性によるものではなく、基本的には論文の書き方において彼女の無知とルール違反がだれにもチェックされないで見過ごされたことによります。

 ゼミ論文や卒業論文の書き方指導やトレーニングがないままいきなり卒論の執筆を要求されて、学生がとまどい途方にくれるのは無理がありません。友人の娘さんにはとりあえず次のようにアドバイスしました。

 ゼミの課題は大風呂敷を広げない、ポイントを絞る、先輩の作品を参考にする(真似る)、多少ひとりよがりでも自分らしいアイデアを入れる、欠点を含んだ内容になってもかまわない(完璧だと先生が出る幕がなくなります)、提出期限は守る、ぐらいでしょうか、と。

本誌:2014年10.20号 13ページ

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