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いとこの来訪(2)高野山巡り

 カナディアンロッキーを遠望するアルバータ州レスブリッジという町に育ったいとこたちにとって大自然とはロッキー山脈や底知れない深みをもったコロンビア大氷原であったり、昔の人が海の端はこんな光景だろうと想像したようなナイアガラ瀑布であったり、オーロラが輝く極北の地であったり、そんな桁外れの自然の驚異だと思います。

 高野山もまた周囲を山に囲まれた大自然の懐にあります。しかしカナダの自然とはずいぶん趣が違います。紀伊半島の奥深くに位置し、樹齢1000年の杉の大木が空に向かって屹立し、かつては人を容易に踏み込ませるような場所ではありませんでした。

 カナダの自然はあくまで人間の手がついてない地球誕生以来そのままの自然であるのに対し、高野山は太古の自然と人間の営みが渾然一体になって溶けあって形成された独特の、いわば霊的な自然が広がっている場所と言っていいと思います。

 密教の奥義を携えて留学先の唐から帰国した弘法大師空海はこの地を修業の場として真言宗をうち立てました。1200年後の現在、高野山は世界遺産に登録され、密教センターとして世界各地からの若者に修行の場を提供しています。

 そんな高野山をカナダ育ちのいとこたちにどう説明したらいいのか、というかそもそも説明なんてできっこないのでとにかく見てもらうことにしました。一番視覚に訴えるものは杉木立と武将の墓です。なぜここに全国の武将のお墓があるのか実は私もよく知りません。おそらく宗派を問わずすべての魂はこの霊地に集まると考えられているのでしょう。

 次に訪れたのは総本山金剛峰寺です。見所の多い高野山でもここだけは絶対外すことはできません。

 古い農家のスタイルを保った寺院建築ながら内部はお寺というよりむしろ宮殿そのものといった感じです。日本一の規模の石庭や豪華絢爛とした狩野派による襖絵、秀次自刃(じじん)の間など通り一遍の拝観コースをたどるだけでもう我々に残された時間は尽きてしまいました。

 いとこたちには日本の長い歴史が今も生き続けている霊場とそれをとりまく環境をじかに見てもらったわけですが、両親の祖国の原初の姿と日本人の精神が形成されてきた歴史の一端を高野山の随所から感じてもらえたのではないかと思います。

本誌:2014年8.25号 17ページ

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