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オペラの魅力(3)

 サンドロたちと自転車で出かけたトッレ・デル・ラーゴでは博物館になっているプッチーニの別荘を見たり、歌劇「西部の娘」を観た記憶があります。あまり人気が出なかったこのオペラがライブだったのか映画だったのか30年以上も昔のことで記憶が定かではありません。

 「去る者は日々に疎し」。今のようにインターネットがなかった時代に交友関係を維持するには航空郵便しかなく、またイタリア語で手紙を書くことは少々苦痛でもあり次第に無沙汰が続くようになり、ついには音信不通になってしまいました。

 ところが今また、自分が青春時代に熱狂したすべてのもの―映画、音楽、オペラの名演、欧米の友人たちとの交遊―がネットやYouTubeを通じてよみがえってきました。かすかな手がかりを通じて昔の友人をネット上で発見することもしばしばです。

 サンドロが現在どうしているのか、姓名、年齢、専門領域などを勘案するとぴったりの人がフィレンツェ大学の哲学科の教授にいます。まだ連絡は取っていませんが昔の交遊が復活する予感がします。親の介護から解放される日もそう遠くないでしょう。悲しいことですが、私自身の人生を取り戻すことも私にとって親の存在同様に大切なことだと思います。

 イタリアの熱狂的なオペラファンたちからオペラの楽しみ方を教わった私は、その後今に至るまであらゆる舞台芸術に関心を寄せるようになりました。文楽や歌舞伎、能はオペラに負けず劣らず声と身体表現が完璧に調和した芸術です。

 こうした芸術あるいは芸能が時代や国境を超えて人々に愛されるのはブルジョア趣味なんかではなく、人間の根元的な喜びや悲しみが激しくストレートにあるいは抑制され、洗練されたかたちで遺憾なく表現されているからに違いありません。

 それにこうした古典的な芸術は、もう若くない私にとっていちばんぴったりくる人生の相棒のような気がします。なじみのストーリーでも演じる人が違えば新発見もあります。それに何といっても痛快なのは歌舞伎座なんかに出かけて周りのお客を見渡すと、65歳の私でも未だに若者に属することを発見することです。

 いつの日かサンドロたちを日本に呼んでいっしょに歌舞伎座で芝居見物をしたいと願っています。青春遍歴パート2です。

本誌:2014年2.17号 13ページ

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