WEB VISION OKAYAMA

連載記事

中学生の社会体験

 夫婦で高級メロンを通年栽培している河口君は小学校の同級生です。朝10時半ごろ、私が両親の朝の介護を終えていつもの喫茶店に休憩に行くと、河口君夫妻も温室での重労働からリフレッシュするためにコーヒーを飲みにやってきます。

 幼なじみとたわいのない話で盛り上がるのは楽しいものですが、お互い65歳を過ぎればパッとした話題はなく、やれ介護に疲れただの重油価格が高騰し大変だのと愚痴の披露合戦になるのは致し方ありません。

 ところが先日喫茶店に入ったら大きな丸テーブルに河口夫婦と中学生の男の子2人が座っていました。聞いてみると今時の中学校のカリキュラムにはいろんな職場で社会体験をする科目があるらしく、この中学生たちはメロン栽培農家での体験学習を希望したとのことでした。

 私も同じテーブルに着いたもののふだん中学生と話す機会がなく何をしゃべったらいいのかドギマギしました。彼らはクリームがたっぷり乗ったカフェラテを飲んでいたのですが、ふと思って「君たち、この店のケーキはとびっきりおいしいよ、オジサンがおごってあげるけどどのケーキがいい?」と声をかけたら素直にチョコレートケーキをリクエストしました。

 手作りのチョコケーキを一口食べた途端中学生は「ウメー!」と感嘆の声を発し、一瞬にして大きなケーキが皿から消えました。私たち大人は飲み物だけ飲んでいたのですが、喫茶店のマドモアゼルが気を効かせて我々にもハーフサイズのチョコレートケーキを出してくれました。

 まだ食べ足りなさそうな中学生の前でケーキを食べるのは酷かなと思い「これも食べる?」と聞いたら「はいッ!」と答えてパクリ。私はと言えば中学生の4倍もの年月を生きてきて今やケーキぐらいじゃ感動できない体質になってしまった……。

 中学生たちは4日間、温室のガラス掃除などいろいろ体験し、毎日高級メロンを腹一杯食べさせてもらって大満足で社会体験を終えたそうです。中学生たちのお世話から解放されて河口君夫婦もやれやれだったようですが話には続きがありました。

 何とその中学生たちは、実習はもう終わったのに後日自主的に手伝いに(遊びに?)きてメロンを食べて帰ったそうです。彼らにはとてもオイシイ社会体験だったようです。

本誌:2013年12.9号 15ページ

PAGETOP