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安全神話よ、いつまでも

 昔から日本は“安全と水はタダ”と言われてきました。水道水はたしかに有料ですが1㎥の水が1ℓのミネラルウォーターより安いのですからタダ同然。これが中国などへ行くと何はともあれコンビニを探して2ℓとか4ℓ入りのミネラルウォーターを買い求め、飲料はもとより歯磨きにも気を配らなければならないので大変な労力とコスト負担になります。

 これに反し“安全”の方は日本でもずいぶん高くつくようになりました。至るところ監視カメラが設置してあり、警備保証は成長著しい産業になりました。しかし、それでも日本は訪日観光客が驚き、感激するぐらい安全が保たれている社会であることには相違ありません。

 日本でふつうに暮らしていて、空港以外の場所で持ち物をチェックされることなど経験したことがありませんが、これが一歩外国に踏み込むとそうでもありません。上海やバンコクの地下鉄改札口にはエックス線透視装置が設置してあって、始発から終電まで、係員のおじさんやおばさんからバッグやリュックを装置に通すよう指示されます。

 地下鉄ですらこの調子でセキュリティチェックをされ、うっとうしいことこの上ないのですが、長距離列車が発着する上海駅などでは一段と厳しいチェック体制がとられています。駅がまるで空港のような構造になっていて、切符をもっていない人はそもそも駅構内に入れません(切符売り場と駅構内は完全に分離されています)。

 乗客は列車の行き先ごとに待合室に入れられ、列車がホームに入ると係員の誘導でホームに移動して指定の車両に乗車する仕組みです。列車が出たあとホームには人っ子ひとり残っていないことを確認して次の列車が入ってきます。

 もし日本の新幹線で上海並に荷物検査なんか始めたら5分おきに列車を出すことなど到底不可能になり鉄道による高頻度・高速大量輸送体制が成り立たなくなります。けれども本当は危ない。でも知らんぷり。

 爆発物や危険な化学物質が入った荷物が網棚に放置されているかもしれないのにひたすら安全神話にすがって運行されている日本の新幹線。おそらく何か起きないかぎり今の便利で自由な乗車システムは維持されるでしょう。安全神話よ、永遠に。

本誌:2013年11.18号 13ページ

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