WEB VISION OKAYAMA

連載記事

命がけの人命救助

 9月、台風18号で増水した淀川の濁流にのみ込まれた小学生男児を厳俊さんという中国人留学生が果敢に川に飛び込んで奇跡の救出をなしえたニュースは、近年中国に対して不信感や嫌悪感を増長させている日本人の心を深く揺さぶりました。

 常日頃尖閣問題をめぐって中国のことを口汚くこきおろしているネトウヨ(ネット右翼)たちも「感動した!」と絶賛一色。なかには「もう尖閣は中国にくれてやる。ついでに沖縄も付けたる」などと過激な言葉を吐くやからもいました。これは何かと政府に注文を付ける沖縄県知事に対する当てこすりでしょう。

 それはともかく、自らの命を顧みない厳さんの無心かつ無償の行動はプロの政治家や外交官が何千人束になってかかっても太刀打ちできないような圧倒的な力で中国のイメージアップに貢献したという気がします。

 そして何よりもこの話がすがすがしかったのは、流された男児も彼を助けた中国人青年もともに無事だったことです。これに反して10月1日に横浜で起きた踏切事故は何ともやりきれない悲しみを残しました。

 電車が迫ってくる線路上にうずくまった老人を見殺しにすることができずとっさに救出した40歳の女性は即死でした。女性の父親はけなげにも「娘は犠牲になったけれどおじいさんが助かってよかった」とマスコミに語っていましたがご両親の無念さ、喪失感はいかばかりか。助けられたおじいさん本人もその家族もまたつらい気持ちで生きていかなければなりません。

 「こういう場合、あなたならどうする?」だれも答えを出せない究極の難問です。もし救出行動を取らないで目の前でおじいさんが電車にはねられるのを看過したら、そうするしかなかったにせよ、悔恨が残り、その後の人生にその光景がつきまとって苦しむでしょう。だからといって救出に駆け出したら今回のような最悪の結果になる可能性はきわめて大です。

 自分ならどう行動する(した)だろうか?淀川の場合は警察なり周りの人を呼ぶのが限界。でも踏切のケースでは助けに向かう気がします。そしてうまくやり遂げてみせると根拠なく想像します。以前交通量の多い交差点で亀が道路を渡っているのを発見したときクラクションの嵐にもめげず亀を助けた私ですから。

本誌:2013年10.14号 13ページ

PAGETOP