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巻頭特集OHKがイオンモールに“新たな放送局”

「日本初」の放送スタジオに懸ける覚悟  4本部体制の“横ぐし”など大幅組織再編

  • イオンモールに設置されるOHKの放送スタジオ(イメージ)

 岡山県下で注目度潤・のプロジェクト、JR岡山駅南への「イオンモール岡山」開業まで1年余り。施設規模や渋滞対策に目を奪われがちだが、岡山放送㈱(岡山市北区学南町3-2-1、宮内正喜社長、資本金3億円)の本格的な放送スタジオ開設も注目のポイント。徐々に見えてきた施設の概要や、駅前の大型商業施設に放送局が拠点を構えるメリットのほか、7月から4本部体制を導入するなど「新しい放送局を立ち上げる」覚悟で改革に挑戦するOHKを取材した。

 新スタジオの概要―5、6階で1800㎡ コンテンツ部門が移転

 OHKの放送施設が設置されるのは、鉄骨地下2階地上8階(延べ約25万㎡)のイオンモール岡山の5、6階部分。5階はメーンスタジオを中心にしたメディアフロア、6階はオフィスフロアで合計約1800㎡。イオンモール開業後は、OHKが制作するニュースや情報などの番組は新スタジオから放送されるようになる。

 サテライトスタジオではなく、本格的な番組制作用スタジオを商業施設内に置くのは日本初のケース。西日本の「旗艦店」に位置付ける施設の起工式で来岡した岡崎双一・イオンモール㈱社長は、記者会見で「立地から考えても公共的な役割が求められる施設」と述べ、テレビスタジオを組み入れる意義を強調。中心市街地の活性化につなげるため「表町とのシャトルバス運行」「イオンの電子マネーWAON活用による連携」など、既存施設との共存共栄を目指す意向を示している。

 情報発信面のパートナーとなるOHKの「イオンスタジオ」には制作、報道など主にコンテンツ部門で働くスタッフ40~50人が移る予定。本社勤務の半数近い規模で、学南町の本社には総務などの管理部門が残ることになる。テレビ局の技術やノウハウが生かせる館内放送でのコンテンツ開発や、シネマコンプレックス併設施設だけに「芸能人による映画の全国プロモーション誘致など、OHKのネットワークが生かせる場面も数多い」(同社)と期待している。

 なぜイオン!?―思いは「岡山盛り上げたい」 TVの枠超えチャンスつかむ

 インターネットなどメディアの多様化でテレビを取り巻く環境が厳しさを増す中、2月1日に基本合意したイオンモールへのスタジオ開設は、社内でも衝撃を持って受け止められたという。同プロジェクト推進に当たり、女子アナから岡山の放送局初の企業広報担当に抜てきされた竹下美保氏の「普通の発想では考えられない」という言葉が多くの社員、関係者にとって率直な印象だった。

 キー局の㈱フジテレビジョン(東京都)専務から2007年6月にOHK社長に就任した宮内氏は、さまざまな機会を通して「放送事業の枠を超えてあらゆる可能性にチャレンジする」「魅力あるコンテンツ、新規ビジネスを開発し地域に貢献する」とアピールしてきた。その言葉通り、地方局では異例とも言える、元米国国務長官でノーベル平和賞受賞者のヘンリー・A・キッシンジャー博士の岡山招へいを2度実現。日本の目指すべき外交指針など博士のメッセージは世界に向けて発信され、岡山の拠点性を高めることに貢献した。

 イオンモールへのスタジオ開設も、こうした取り組みの延長線上に位置付けられる。イオンやテナントの広告収入といったレベルではなく、何より「地元メディアとして岡山を盛り上げたい」という思いがあり、その先に従来のテレビ事業の枠を超えたビジネスチャンスが広がる―という考え方だ。

 看板ニュース番組「スーパーニュース」のキャスターを務め、知名度の高い竹下氏の企業広報起用も、情報発信の強化という意欲の表れ。駅直結という立地で、年間2000万人の来店が見込まれる大型施設の賃料は高額に上り、周辺で渋滞が発生すれば報道業務などにはマイナス面も予想されるが、現本社の耐震補強などとの兼ね合いもあり「長い目で見るとメリットが大きいと判断した」(同社)と言う。

 社内の改革―「4本部体制」導入 横の連携強化と責任明確化

 新スタジオの開設を契機に組織の大改革にも乗り出している。7月1日付で「コンプライアンス・報道本部」「総合経営開発本部」「コンテンツ・ビジネス戦略本部」「社屋環境整備・放送本部」の4本部体制を導入。各本部長には4人の取締役が就任して情報共有を図っているほか、総合経営開発本部にイオン進出関連など社内全体の業務調整を主導する「総合調整室」と、イオンのカウンターパートナーとなる「駅前プロジェクト推進室」を新設した。

 狙いについて、小坂卓之・取締役総合経営開発本部長は「大プロジェクトの推進に当たり、今まで以上に横の連携を強めるとともに、責任体制の明確化を図った」と説明する。いわゆる“横ぐし”と呼ばれる概念で、部局間の壁を低くすることで組織の柔軟性、活性化を目指すものだ。

 一般社員の意識改革も急がれており、 “アドレスフリーの仕事力”を合言葉に、所属部署にとらわれない発想を促そうと、プロジェクトの説明会や意見聴取を順次実施。また、各部署の代表による分科会で新スタジオの在り方などについて研究しており、「1日数万人が訪れる立地で存在をアピールするためにどのようなスタジオ、オフィスがふさわしいのか」「番組編成はどうあるべきか」―など、さまざまな観点から議論を進めている。

 スタジオ開設は、数段階にわたるとみられるイオンモール開業のいずれかのタイミングに合わせる予定で、今後、スタジオやオフィスの設計、放送設備導入などの準備作業を進める方針。秋にはスタジオ開設1年前のプロモーションも検討しているそうで、小坂本部長は「“第2の開局”にとどまらず、新しい放送局をつくるぐらいの覚悟で取り組みたい」と話している。

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