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2月の歳時記

 実家の花壇は今や手入れをする人とてなく、荒れ放題のまま春を迎えようとしています。公園の花壇のように季節ごとにきれいさっぱり新しい花を植え込めばいいのですが、なかなかそうはいきません。

 母が植えた水仙、クリスマスローズ、チューリップ、ダッチアイリスなど球根類や宿根草が歳月とともに無造作にはびこっているのをエイヤっと処分するのがなんだか怖いのです。母が生きている限りはこのままにしておくのが無難な気がします。

 そんな庭も2月中旬ともなればにわかに春めいてきました。今年も福寿草が8輪ほど花を咲かせています。パラボラアンテナのような花の形状は、寒い季節、太陽の光や熱を花の中央部に集める効果があるそうです。

 福寿草は不思議な植物です。2月下旬ごろには花が終わり葉っぱが出てくるのですが、その葉は5月はじめには早くも枯れてしまいます。光合成をして養分を蓄えるにはあまりに短い期間しか葉がないにもかかわらず、やがて早春が近づく頃にはまた大きなつぼみを膨らましてきます。

 うち捨てられたような庭にも毎日訪問者があります。小鳥たちです。彼らの目当ては段ボール箱に入れたまま庭に置いてある渋柿。冬の霜に当たって渋が抜けて熟柿になっているのですが、鳥たちはなかなか頭がよく、集団でやってきて段ボール箱のふたを開けて中の柔らかくなった柿をついばんでいます。

 野生の鳥は警戒心が強く、私が玄関のドアを開けるといっせいに飛んで逃げます。ところが先日とても珍妙なことがありました。柿が入った段ボールのふたの上に重石代わりにプラスチック製の植木鉢を置いておいたのです。すると鳥たちはさっそくそんな重石なんかいとも簡単にどけて柿を食べていました。

 重石代わりだった植木鉢は箱の上から落ちて地面に伏せたかたちで鎮座していたのですが何か様子が変です。近づいてみると「カサコソ」と音がし、隙間からは何か動くものが見えました。

 びっくりしました。ウグイスが1羽プラスチックの植木鉢の中に閉じ込められていたのです。人間や猫には警戒を怠らない野生のウグイスもまさか植木鉢が頭の上に落ちてきて囚われの身になることは想像できなかったようです。鉢から出してやると一目散に山に帰っていきました。

本誌:2013年2.25号 12ページ

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